選抜迷選考集

進学校・品位編

選抜高校野球大会は、前年秋の秋季地区大会の成績をもとに出場校を選出するが、その選考には数々の事件や波乱がある。
センバツの選考は品位も問われる。戦績優秀でも品位が欠ければ漏れることがある。高野連のお偉いさん曰く
「伝統公立進学校はたとえ初戦敗退でも品位で逆転選考」
「やんちゃな私立は上位進出でも叩き落とす。これがセンバツだ!」


最長ブランク進学校逆転選考事件(1987年 松山北)

1986年秋季四国大会
決勝池田5-4明徳義塾
準決勝池田6-2丸亀商 明徳義塾9-4鳴門
準々決勝池田7-1中村 丸亀商4-3松山北 明徳義塾3-0丸亀 鳴門7-5川之江

1986年秋季中国大会
決勝岡山南2-1広島商
準決勝岡山南1-0大田 広島商7-1米子

当時の中国と四国の選抜出場枠はともに3.5枠ずつ。前年は中国4・四国3だった。
四国は決勝に進出した池田と明徳義塾が実力がずば抜けていて鉄板。3校目は優勝した池田に負けた丸亀商が地域性で有利。
中国との比較になる4校目はベスト4の鳴門が有力だろう。5点差と少し点差は開いたがコールド負けではない以上、普通に考えたら準々決勝敗退校が逆転選考される余地はない。
中国はこちらも決勝に進出した岡山南と広島商は確実。3校目は準決勝の試合内容から大田が有力。米子が四国4校目と最後の枠を争う形か。

というわけで最後の7枠目は米子と鳴門が争うというのが有力。ただ気になるのが愛媛の進学校松山北が逆転選考を狙ってる。
だが1点差負けとはいえ相手の丸亀商は準決勝で敗退してる。しかも愛媛2位。比較対象となる鳴門は県大会で松山北に勝った愛媛1位の川之江に勝っている。こんな状況で松山北の選出は普通に考えればありえない。それに四国4校目に選ばれても中国4校目との争いに勝てるのか。

選考結果
中国:岡山南、広島商、米子
四国:池田、明徳義塾、丸亀商、松山北


・・・えー!。なんと愛媛の進学校松山北が準々決勝ながら逆転選考。鳴門はベスト4に進出しコールド負けしたわけでもないのに落選。

選出理由:「松山北が投手力を含めた守りにやや分があり、地域性も考慮されて鳴門を抑えた。」

普通に考えたらこの戦績では松山北とか当落線上にもあがらないし、投手力とか地域性は建前で伝統公立進学校を出したいだけなのだろう。さらに松山北は当時の史上最長ブランクである56年ぶりの出場になった。こういう話題性にも高野連は弱い。

ヤンチャ私立落選事件(1988年 江の川)

1987年秋季中国大会
決勝広島工4-1西条農
準決勝広島工11-1倉吉東 西条農3-2江の川
準々決勝広島工4-3松江商 倉吉東6-3南陽工 西条農3-1宇部商 江の川4-3鳥取西

上記の逆転選考の1年後。江の川は中国地区有数のやんちゃ坊主の巣窟として知られ、逮捕・補導歴があるヤンチャ生徒でも、野球さえできればノープロブレムで入学を許可してきた。

1987年の秋季中国大会、翌年の選抜は記念大会ということで中国の出場枠は4枠になった。
この年ベスト4で1点差の惜敗で終えられた江の川はほぼ問題なく選出される成績である。一方ベスト4ながら1-11の大敗を喫した倉吉東はやや危うい当落線上か。
3枠目、4枠目にはベスト4の2校の他、好投手を擁する宇部商もチャンスありと見られていた。だがベスト4のどちらかが落ちるとしたら大敗した倉吉東だろう。
江の川の落選はありえないはずだ。まさかヤンチャ私立という理由だけで不祥事も起こしてないのに落選なんてことは・・・
ただ倉吉東は伝統公立進学校である。まさかとは思うが選考結果は・・・

選考結果:広島工、西条農、倉吉東、宇部商

・・・(つд⊂)ゴシゴシ。えー!。なんと江の川がまさかの落選。そして倉吉東はコールド負けしたにも関わらずなんと3校目で選出。

選出理由:「(倉吉東は)広島工に大敗したが、河野投手を軸にキビキビした試合ぶりを見せた」
「残る1校は江の川と、1勝もできなかったとは言え、好投手木村を擁する宇部商の比較となったが、宇部商が選ばれ、江の川は補欠に回った。」


江の川の落選理由がいまいちぼかされているが、何か書けない事情があるのか?「やんちゃな私立だから落選」とはとても書けないのだろう(それが事実だとしても)。
このような理不尽選考で出場を逃した江の川だったが、翌年夏の甲子園には出場しベスト8に進出。これは江の川にとっては救いだったが、選考委員会がフシアナだったとも言えそうだ。

奈良高逆転選考事件と高校野球第1回優勝校の無念(1991年 奈良、鳥羽)

1990年秋季近畿大会
決勝天理3-1神戸弘陵
準決勝天理1-0大阪桐蔭 神戸弘陵5-2箕島
準々決勝天理4-0浪速 大阪桐蔭7-0報徳学園 神戸弘陵2-0鳥羽 箕島3-0三田学園
1回戦天理4-1奈良 報徳学園6-5近江 神戸弘陵3-2市和歌山商 箕島9-2栗東
浪速3-0向陽 三田学園2-1近大付

1990年の秋季大会、奈良の県内ナンバー1の公立進学校の奈良高校が奈良大会で天理・智弁学園の2強との対戦を避ける驚異のくじ運で決勝まで進出。決勝で天理に0-7で大敗するも県2位で近畿大会出場を決めた。
だが県大会のくじ運とは嘘のように近畿大会では初戦で天理と当たってしまい、1-4の完敗(当時は初戦で同県対決があった)。

一方でベスト8に目をうつすと、奈良高以上に話題性のある学校がいる。それは京都の鳥羽である。記念すべき第1回全国中等学校優勝野球大会の優勝校である京都二中の後進の学校である。
京都二中は1948年に廃校になったのだが、高校野球の第1回優勝校の廃校を惜しむファンやOBの期待から1984年に跡地に建設されたのが鳥羽高校である。実際には別々の学校であるが、特例で京都二中の記録を継承する学校になった。
こうして一度は廃校になった京都二中が昭和22年以来44年ぶり、鳥羽高校となって初の甲子園出場を狙える位置にきた。

近畿の選抜出場枠は上記の通り7つ。ベスト4の4校は確実として、その他の近畿大会出場校から3校。準々決勝で最小得点差の2点差負け、ベスト8敗退校唯一の公立校で、同一府県の京都勢のベスト4進出なし、なにより高校野球第1回大会優勝校を継承している鳥羽は戦績・地域性ともにかなり有利だろう。
準々決勝でコールド負けの報徳学園を除くベスト8以上の7校が有力か。初戦でいいところなく敗れ、地域性でも不利な奈良高はいくら県内トップの進学校で、相手が優勝した天理でも選出は難しい。
新聞の予想でもベスト4の4校は当確、残り3枠を三田学園、浪速、鳥羽と、初戦敗退ながら善戦した市和歌山商、近大付が争うと予想され、奈良は下馬評にも上がってなかった。

もし初戦敗退の学校が逆転選考されたとしても、その場合落ちるのは同じベスト4に大阪・兵庫の学校が進出している浪速か三田学園だろう。スコア・地域性ともに優勢で公立のレジェンド校の鳥羽が落ちる理由はないはずだ。 準々決勝敗退組で唯一1回戦を戦っておらず、近畿大会0勝というのが不利だが、それは初戦敗退の学校も同じことである。

選考結果:天理、神戸弘陵、大阪桐蔭、箕島、三田学園、浪速、奈良

なんとノーマークだった初戦敗退の伝統進学校奈良高が逆転選考。そして鳥羽は無念の落選。
後述のように2009年には選抜第1回優勝校の高松商が当落線上にいながら落選しており、高野連にとって初代優勝校は優遇対象ではなかったのか。
それとも選抜と選手権では主催新聞社が違うため選手権の第1回優勝校ということが逆に嫌われたのか。あるいは鳥羽は京都二中の跡地にできた新設校という扱いだったのか。

選出理由:「強豪天理に県、地区大会で食い下がった点、短期間で7点差を3点差までに詰めたことが評価された。」

0-7の大敗が食い下がったと言えるのか?1-4も善戦したとは言い難い。
こうして進学校奈良を筆頭とした謎の選考によりこの年は京都からの選抜出場はゼロになり、初代王者のレジェンド校京都二中の復活、鳥羽高校としては初の甲子園出場は2000年までお預けとなった。

ヤンチャ私立落選事件2(2009年 鳥取城北)

2008年秋季中国大会
決勝倉敷工4-1南陽工
準決勝倉敷工2x-1鳥取城北(延長12回) 南陽工4-1開星

2008年秋季四国大会
決勝西条2-1今治西
準決勝西条9-0高松商(7回コールド) 今治西5-2尽誠学園

中国地区と四国地区の選抜出場枠は2.5枠ずつ。中国の3校目と四国の3校目が最後の枠を争う。
両地区とも決勝に進出した4校は当確、中国四国地区の最終枠の候補は以下の3校に絞られたと思われた。
中国大会準決勝で倉敷工に延長12回の末サヨナラ負けした鳥取城北、四国大会準決勝で今治西に2-5で負けた尽誠学園、同じく準決勝でコールド負けしたが優勝した西条と対戦し、香川大会決勝で尽誠学園に勝って県1位の高松商。この中で県1位、優勝校に延長戦の接戦、甲子園にあと一歩届かない未出場校と有利な点が多い鳥取城北が最有力と思われた。

だが鳥取城北は2004年に暴力事件で1年間の対外試合禁止処分を受け、翌年の夏の大会直前に温情で軽減されたのだが、その高野連の温情を裏切るかのように2006年夏には試合中に野球部員が現金を盗むという前代未聞の不祥事が発生。中国地区トップの不祥事のデパートになっていた。
しかしあくまで先輩が起こした不祥事であって、この世代には関係ないこと。過去の不祥事云々で落選させていたら、野球強豪校はどこも出られなくなってしまう。まさかとは思うが選考結果は・・・

選考結果:倉敷工、南陽工、開星

やはりやんちゃな私立は落選だった。開星も品位のいい私立とはいえないが鳥取城北はそれ以上にやんちゃということだろう。
鳥取城北でも尽誠学園でも高松商でもなく、各新聞でも下馬評でまったくノーマークの開星が選出。開星は県2位、準優勝校に3点差負け。鳥取城北は県1位、優勝校に1点差のサヨナラ負け。しかも島根大会で開星に勝った邇摩にコールド勝ち。本来であれば開星が選ばれる要素はどこにもない。

選出理由:「鳥取城北と開星の2校を比較して、中国地区ナンバー1の好投手、広島新庄の六信を打ち崩した開星が上回った。」

いくら好投手がいるとは言え広島新庄は当時甲子園未出場。広陵や如水館のような全国区の強豪に勝ったのならともかく、広島新庄ではピンとこないんじゃね?というのが筆者の私見。
また開星と広島新庄の試合をちゃんと見たある人によれば、この試合は四死球やエラーで広島新庄が自滅したとのこと、六信を打ち崩したとは言い難いとのことだった。
まあ「鳥取城北はヤンチャ私立だから選ばれなかった」というのが正直な理由だろう。そして四国地区3校目は尽誠学園が選ばれ、開星と尽誠学園を比較した結果。

選出理由:「全員が腰を落としてしっかりと守る開星に対し、尽誠学園の守備はまだまだ未完成」

なんというか尽誠学園に失礼な選考理由ではないだろうか?このとても笑える選考理由から、アンサイクロペディアでは「腰を落としてしっかりと守る枠」と命名された。
開星はセンバツで明治神宮大会優勝の慶応義塾を4-1で破って1勝したので、結果的に選考委員会の読みは正しかったと言える。鳥取城北も翌年夏の甲子園に悲願の初出場を果たしたのが救いだった。
ちなみに他に選抜高校野球第1回大会優勝校として有名な古豪、高松商が当落線上にいた。四国大会準決勝で西条に0-9のコールド負けしたとはいえ、県大会で同じ四国大会ベスト4の尽誠学園に勝利したこと、相手が優勝校であることを考慮して高松商が選ばれる可能性もあるのでは?と思ったが、結果は尽誠学園との比較に敗れ四国の3校目にもなれず。
高松商が高野連のゴリ推し対象ではなかったことは筆者としては意外だった。

ラフプレー落選事件(2014年 花巻東)

2013年秋季東北大会
決勝八戸学院光星13-2東陵
準決勝八戸学院光星2-1花巻東 東陵4-1青森山田
準々決勝八戸学院光星9-2酒田南 花巻東4-3日大山形 東陵13-11角館 青森山田8-7弘前学院聖愛

東北地区の選抜出場枠は2枠。例年なら決勝に進出した2校ですんなり決まるところだだが、この年は東陵が決勝で八戸学院光星に2-13で大敗したため東陵の出場が微妙になった。
だが東陵は東日本大震災の被災地気仙沼市の学校で、被災地の学校が一般枠圏内まで勝ち上がったからには高野連は落とす勇気はないだろう。
しかも逆転選考の対象となる準決勝惜敗の花巻東は、直前の2013年夏の甲子園でサイン盗みをして世間を騒がせ、さらにこの秋季大会の準決勝でラフプレーをして八戸学院光星の選手を病院送りにするなど、品位は最悪だった。
これなら東陵が落選して花巻東を逆転選考する余地はなし。

選考結果:八戸学院光星、東陵  補欠:青森山田、角館

やはり大差がついたが決勝進出の2校ですんなり。だが波乱が起きたのは補欠校の選考だった。なんと補欠1位は準決勝で東陵に完敗した青森山田、補欠2位は準々決勝敗退の角館。
優勝した八戸学院光星に準決勝惜敗で、補欠1位は確実と見られていた花巻東が八戸学院光星戦でのラフプレーが原因で補欠からも落選したのである。「捕手は脳震盪を起こし退場になった。選手生命にかかわる。補欠にふさわしくないと選出しなかった。」と高野連から直々にラフプレーを非難する選考理由が発表された。

山陰希望枠事件(2015年 米子北)

2014年秋季中国大会
決勝宇部鴻城2-1岡山理大付
準決勝宇部鴻城1-0米子北 岡山理大付4-1宇部商

2014年秋季四国大会
決勝英明5-3今治西
準決勝今治西5-4明徳義塾 英明7-0高知

それぞれ決勝に進出した学校は確実。スコアと地域性から中国の3校目は米子北、四国の3校目は明徳義塾になるのも濃厚で、この両校が最後の枠を争う。
スコアはともに1点差負けで甲乙つけがたいが、総合力では明徳義塾が上回り、米子北は優勝校に負けたことと甲子園未出場であることが有利な点。
ただ気になる点が1つ。2015年の選抜出場校を決める選考委員の委員長は元星稜高校監督の山下智茂なのだ。あの1992年夏の甲子園で明徳義塾が星稜の4番松井秀喜に対し5打席連続敬遠をしたときの監督である。
彼にとって明徳義塾は憎き学校。こうなると結果は明らかだった。

選考結果:宇部鴻城、岡山理大付、英明、今治西、米子北
選出理由:「明徳義塾のほうが実力が上ではあるが、センバツに出場する機会の少ない山陰に希望と夢を与える。」


戦績ではどちらが選ばれてもおかしくないし、米子北が選出されてもそこまで文句はないが、選出理由が少しまどろっこしい。「優勝校に1点差負けであることを評価して米子北を選出した」と言ったほうがまだすっきりする。
ちなみに鳥取県勢はその2年前に鳥取城北が中国大会優勝で選抜に出場しており、その4年前にも八頭が選抜に出場するなど、それほど選抜から遠ざかっていたわけではない。 綺麗事を言って明徳義塾を落としたいことがファンの間では見え見えであった。このうまい具合に聞こえの良い選出理由から「山陰希望枠」と名付けられた。
こうして「山陰に希望と夢を与える」と銘打った米子北は選抜の初戦で常総学院に13盗塁を決められるなど1-14の大敗。絶望と現実しか残らなかった。

常 総 学 院 011 211 062=14
米  子  北 000 000 010= 1
(2015年春)


全力疾走枠&サイン盗み落選事件(2016年 土佐、済美)

2015年秋季中国大会
決勝創志学園12-1南陽工
準決勝創志学園5-0開星 南陽工6-3如水館

2015年秋季四国大会
決勝高松商6-1明徳義塾
準決勝高松商6-5済美 明徳義塾4x-3土佐(延長10回)

2015年の秋季四国大会は準決勝が2試合とも1点差の接戦となり、中国大会の準決勝は2試合とも大味な試合になり、この年は中国・四国の5枠目は四国が持っていくものと思われた。
そんな中古豪高松商が明治神宮大会で優勝。四国に神宮枠が与えられもう1枠増えた。これで中国2枠、四国3枠が確定し、中国の3校目と四国の4校目が最後の枠を争うこととなった。

まず四国大会優勝の高松商、準優勝の明徳義塾は確実。3枠目は優勝した高松商に1点差の惜敗であることと、地域性から済美が有力と見られた。中国地区と争う4枠目は同じく準決勝1点差負けの土佐が有力。
中国地区は優勝の創志学園は確実、準優勝の南陽工は決勝で大敗したが、公立工であることと準決勝で創志学園と対戦した開星も完敗であることから確実と言える。3校目は開星と如水館で争い、その勝者が土佐と中国・四国の6枠目を争うものと思われた。
またこの年は明治神宮大会優勝の高松商に香川大会決勝で唯一土をつけた離島の星、小豆島が21世紀枠での出場が有力視されていた。こうなってくると四国は21世紀枠・神宮枠を含めて4枠になるため、最後の枠は中国に行くのだろうか?

だがこう戦績通りにはいかない。土佐は私立ではあるが県内有数の進学校であり、全力疾走で高野連のウケもよく、2013年には私立校初の21世紀枠に選出された。
さらに選抜選考委員会に土佐高校OBを2人送り込む。ちょっとそれ不公平じゃないのか?国際試合の審判やオリンピックの開催地決定みたいに、公平に審査するために出場候補校の関係者は関わるべきではないような。
一方済美は2014年に2年生部員が1年生部員灯油やカメムシを食べさせる不祥事で1年間の対外試合禁止。さらに謹慎明けにもコーチの不祥事が発覚するなど高野連が嫌うやんちゃな私立、不祥事のデパートに成り下がっていた。
全力疾走がモットーの伝統進学校土佐と、新興ヤンチャ私立の済美では、戦績が互角ならばどちらが優遇されるかは明白だ。だがこの年の済美はいじめ事件の被害者の世代だ。四国は神宮枠を獲得し最大5校の出場も可能。こうなったら済美と土佐の両方を選出するのか?

選考結果
中国:創志学園、南陽工
四国:高松商、明徳義塾、土佐
中国・四国の6枠目:開星


この年の選抜選考会からネット上でバーチャル中継された。結果は四国3校目は土佐が選ばれ、済美と開星の比較では「粘り強い攻撃と投手力の高さ」が評価されて開星が選ばれ、済美はまさかの落選となった。
この出場校発表の際に異例の発表。四国大会でサイン盗みがあったとのことだった。このサイン盗みの疑いがかかったのは済美だった。どうやら済美はサイン盗みを理由に落選したとのことだった。
前述のラフプレーをした花巻東と似たような理由での落選だが、このサイン盗みは相手の高知商の抗議によるもので、審議は定かではない。
こうして 「全力疾走枠」で見事センバツ出場した土佐だったが、初戦で大阪桐蔭に0-9の大敗を喫した上、対戦校が次々敗れ逆トーナメント制覇、スポーツナビで21世紀枠に間違われるという散々な結果になった。

土    佐 000 000 000=0
大阪桐蔭 003 002 22X=9
(2016年春)

地域性編

選抜大会選考の基準の1つは地域性。成績が互角の場合は、同一県から2校目となる学校ではなくその年まだ選出されてない県から選ぼうという基準である。
出場枠が2枠の地区で同一県の学校が2校決勝に進出した場合、しばしば逆転選考も起きていた。

地域性重視の逆転選考(1994年・1996年 東北)

6県で2枠しかない東北は20世紀までは他の地区より地域性を重視していた。決勝が同じ県同士の対決になると、準優勝の学校は落選し準決勝で敗れた学校が逆転選考されることが多かった。

1994年秋季東北大会
決勝仙台育英9-1東北
準決勝仙台育英2-1清陵情報 東北1-0盛岡大付

選考結果:仙台育英、清陵情報

宮城同士の決勝戦となったこの年は、東北が準優勝ながら地域性と決勝での大敗が響いて落選。準決勝で優勝した仙台育英に善戦した清陵情報が甲子園未出場だったこともプラスになって逆転選考された。


1996年秋季大会
決勝光星学院6-3青森山田
準決勝光星学院2-1平工 青森山田9-2学法石川

選考結果:光星学院、平工

青森同士の決勝となったこの年は決勝戦は3点差とそれほど大差はつかず。準決勝で光星学院に負けた平工は1点差の惜敗であったが、通常なら決勝戦3点差負けで逆転選考はまずない。
しかし青森山田と平工の2枠目争いは長時間の白熱した議論の末、平工が選出され、ここでも地域性が優先された。

仙台育英悲劇の落選(1979年)

1978年秋季東北大会
決勝東北4-2仙台育英(延長10回)
準決勝東北12-0紫波(6回コールド) 仙台育英1-0鶴商学園

この地域性重視の選考が特に際立っていたのが1979年。
同県対決となった決勝戦は、東北が延長戦の末仙台育英に勝利。優勝した東北は当確で、準優勝の仙台育英も延長戦にもつれての惜敗である以上通常なら問題なく選出される位置であるが、東北は地域性が重視される。
この場合準決勝で東北に負けた紫波の比較になるが、紫波はコールド負け。コールド負けでは紫波の選出は困難。鶴商学園が1点差負けで終えたが、仙台育英に負けていてはまず論外である。
他に逆転選考できそうな学校もなく(強いてあげれば準々決勝で東北に2-4で敗れた秋田商か)、これでは宮城から2校となっても、東北と仙台育英を選出する以外ないと思われたが・・・。

選考結果:東北、鶴商学園

なんと仙台育英は落選し、準決勝で直接対決で仙台育英に負けた鶴商学園が逆転選考。

選出理由:「鶴商学園は夏の甲子園出場選手が7人も残り、エース君島の投手力が育英より優れており、地区大会で1-0で育英に惜敗してるものの、実力でやや上回る。」
「地域性も加味されて鶴商学園が選ばれた。」


直接対決で負けてるのに実力は上回るとのこと。まあ結局は地域性が決定打なのだろう。いくら地域性重視とはいえ仙台育英にとっては非常に納得できない選考だ。 東北大会準決勝の試合後、勝利した仙台育英の選手たちは歓喜し、鶴商学園の選手たちは悔し涙を流しただろうに、選抜出場はまさかの逆の結果に。
1970年代以降、地区大会の直接対決で勝った学校が落選、負けた学校が選出されたのはこの例と、1993年の近畿の京都成章落選・川西明峰選出(近畿編参照)の2例のみである。
東北も21世紀以降は地域性より戦績が重視されるようになり、2001年(2000年秋季大会)と2016年(2015年秋季大会)は決勝が同県対決になったものの決勝に進出した2校が順当に選出されている。

逆転選考傑作選

二階級逆転選考事件(2003年 福井)

2002年秋季北信越大会
決勝遊学館10-3福井商
準決勝遊学館9-4長野工 福井商9-5氷見
準々決勝遊学館2-1福井 長野工10-4新潟明訓 福井商3-0日本文理 氷見10-0小松市立

2002年秋季福井大会
決勝福井2-1足羽
3位決定戦福井商6-1鯖江
準決勝福井5-3福井商 足羽1-0鯖江

北信越の選抜出場枠は2枠。2002年夏の甲子園で創部2年目、全員2年生以下でベスト8進出の快挙を果たした(といっても4校全て初出場という前代未聞の楽なブロックではあったが)遊学館が圧倒的な強さで北信越大会優勝。
遊学館はもちろん選抜確実である。問題はもう1校。例年なら優勝校と準優勝校がすんなり選出されるところだが、この年は決勝で福井商が大敗。逆転選考フラグか。

対象は準決勝で遊学館に負けた長野工か。だが長野工も4-9の負けは善戦とは言い難い。
実は逆転選考を狙ってる学校はさらに下のラウンドにいた。準々決勝で遊学館に負けた福井高校(現福井工大福井)は1点差の惜敗で、この秋の北信越地区内で最も遊学館に善戦した。
しかも準優勝の福井商は県3位で、福井は福井大会準決勝で福井商を5-3で破り県1位。まさに事実上の準優勝校といえる。準優勝の福井商より遊学館に善戦し、福井大会で福井商に勝って優勝しているのは十分なプラス材料。

だがしかし、準決勝敗退ならまだしも準々決勝敗退校が決勝進出校相手に逆転選考なんてありえるのか?理不尽選考だらけの昭和中期までならともかく、戦績が重視された近年の選抜で二階級の逆転選考なんて聞いたことがない。
近年はどんなに優勝校に善戦しても、2ラウンド以上下位のラウンドで負けたら終戦。伝統公立進学校でも逆転選考は1ラウンド差までだ。昭和末期なら1984年の三国丘(ベスト16で選出)と近大付(ベスト4で落選)の例はあったが、あれは地域性が響かなければ近大付も選ばれてたはず。
これで福井が選出されたら準優勝の福井商どころか、ベスト4の長野工からも非難されかねない(しかも長野工はそこまでの大敗じゃないし)。福井商か、福井か、あるいは長野工か、果たして結果は。

選考結果:遊学館、福井  補欠:福井商、氷見

2枠しかないのにベスト8止まりの福井が逆転選考キター。準優勝、ベスト4をはねのけて二階級特進だ!
やはり遊学館に最も善戦したのと県大会で福井商に勝ってることが評価されての選出。
直接対決で負けてる福井商はともかく、直接対決がなく自身より下で負けたチームに逆転選考され、補欠にも選ばれなかった長野工の心境やいかに。

二階級逆転選考事件2(2008年 宇治山田商)

2008年秋季東海大会
決勝常葉菊川5-3中京大中京
準決勝常葉菊川10-3常葉橘(7回コールド) 中京大中京8-0三重(7回コールド)
準々決勝常葉菊川5-2市岐阜商 常葉橘2-1岐阜中京 中京大中京3-2宇治山田商 三重4-3豊田大谷

2008年秋季三重大会
決勝宇治山田商10-3日生第二
3位決定戦三重7-0相可
準決勝宇治山田商4-0三重 日生第二4-3相可

80回記念大会のため東海の選抜出場枠は北信越とともに2.5枠に増枠。東海3校目と北信越3校目が最後の枠を争う。
だが準決勝が2試合ともコールドゲームになってしまった。北信越大会の準決勝は2試合とも接戦。これでは残念ながら東海・北信越の5枠目は北信越に回ることが確実か。せっかくの記念大会なのに東海はもったいないことをした。

・・・と思っていたら常葉菊川が明治神宮大会で優勝し、東海が神宮枠を獲得。この状況で東海に3枠目が回ってきてしまったのである。一応東海3.5枠、北信越2.5枠で東海4校目と北信越3校目の比較になるがさすがに東海4校はないだろう。

準決勝でどちらもコールド大敗だが、優勝した常葉菊川から3点取った常葉橘のほうが有利か。三重は決勝で負けた中京大中京に完封コールド負けなので印象最悪。だが静岡の常葉菊川が優勝してるため地域性では三重が有利。
だが準決勝が2試合ともコールドということはご存知のように準々決勝敗退からの逆転選考もある。
その候補は準々決勝で中京大中京に2-3で惜敗した宇治山田商。6回まで2点をリードしながらの逆転負けであった。三重大会では三重に4-0で快勝するなど圧倒的な強さで優勝し、県1位で出場。
2007年夏の甲子園にも出場した好投手平生を擁して投打とも総合力はベスト4の常葉橘や三重より高いといえる。

だが宇治山田商は準々決勝からの登場のため東海大会0勝(東海大会は県1位校は1回戦免除で準々決勝から登場する)、常葉橘と三重は1回戦からの登場で東海大会2勝と2勝の差がある。
これは上記の2003年の福井と福井商の関係に似ている。東海大会2勝の差があるが県大会の直接対決の成績、対中京大中京戦のスコアとも宇治山田商は三重より有利だ。
しかし常葉橘とは直接対決で勝ってるわけでもないし、常葉橘は優勝した常葉菊川と対戦している。宇治山田商が常葉橘を上回る明確なデータはないのに、東海大会無勝の宇治山田商が2勝の常葉橘を逆転選考なんてできるのか?地域性なら常葉橘より有利だが。

ちなみに市岐阜商も準々決勝で優勝した常葉菊川に善戦したがこちらは無理だろう。1回戦から登場なので宇治山田商より多い1勝しているが。
3校の神宮枠争い。常葉橘か、三重か、宇治山田商か。

選考結果:常葉菊川、中京大中京、宇治山田商  補欠:市岐阜商(1位)、常葉橘(2位)

東海大会0勝の宇治山田商が逆転選考キター。
これも2階級特進か。いやこちらは1ラウンド差なので1.5階級特進くらいか。だが0勝のチームが2勝したチームを2校もはねのけたから2階級どころか2.5階級特進ともいえる。

さらに東海4校目で北信越との比較に回ったのも準々決勝敗退の市岐阜商とは。さすがに敦賀気比には敗れて補欠に留まったが。
常葉橘は準々決勝敗退校に2校も抜かれて補欠2位、三重は補欠からも落選。準決勝敗退2校にとっては悔しすぎる選考になった。
2008年は秋季関東大会で1回戦シード・初戦となる準々決勝敗退の宇都宮南が選出されたように、どうやら県1位での1回戦シードは1勝したのと同じと計算されるようだ。確かに県大会では県2位・3位校より1勝多く勝ってるしね。

参考

ならば県対決の直接対決で勝って県1位であれば、二階級以上下のラウンドでも逆転選考が認められるならこういう場合はどうなの?

2010年秋季四国大会
決勝明徳義塾15-1香川西
準決勝明徳義塾9-2新田(7回コールド) 香川西3-1高知
準々決勝明徳義塾6-5寒川 新田5-4徳島商 香川西7-6城南 高知7-0今治西

2010年秋季香川大会
決勝寒川5x-4香川西

明徳義塾が準決勝、決勝とも圧勝。香川西は決勝進出しても1-15の大敗じゃまずいでしょ。しかも香川2位。
準々決勝敗退ながら明徳義塾に唯一善戦したのが寒川。香川大会決勝で香川西に勝って県1位だ(9回裏に2点取っての逆転サヨナラ勝ちではあったが)。
寒川は準々決勝から登場なので四国大会0勝、香川西は1回戦から登場で四国大会3勝だが、5-6と1-15じゃどっちの方が善戦したかは明らかだし、県大会の直接対決で寒川が香川西に勝っている。これは迷わず寒川を選出するべきだよね?

選考結果:明徳義塾、香川西  補欠:高知、新田

準優勝の香川西がすんなり選出かよ。寒川は事実上の準優勝なのに補欠にすら選ばれず。つまり寒川はかすりもせず香川西と比較する土俵にすらあがれなかったということ。
まあ香川西は準決勝で強豪高知(高知大会で明徳義塾を破って県1位)に勝っているので、それだと寒川の方が実力が上とは一概には言えないのだろうが。
いやそれを言ったら2008年に東海大会2勝でベスト4に進出しながら0勝の宇治山田商に逆転選考されて落選した三重も、愛知大会で中京大中京(県3位)を抑えて優勝した愛工大名電に勝ってたんだが。
あと寒川はやんちゃな私立だから救われなかった印象も(香川西もやんちゃ私立だが)。

その6年後にも


2016年秋季四国大会
決勝明徳義塾11-2帝京第五
準決勝明徳義塾10-2済美(7回コールド) 帝京第五5-3英明
準々決勝明徳義塾2-0宇和島東 済美8-0生光学園 帝京第五7-0高松商 英明7-5中村(延長13回)

2016年秋季香川大会
決勝宇和島東3x-2帝京第五

明徳義塾が高知大会決勝で不覚をとって中村にまさかの敗戦。高知2位で四国大会に。
そのおかげでせっかく愛媛大会で優勝し、県1位で四国大会に出場した宇和島東は不運にも初戦となる準々決勝で明徳義塾と当たってしまい、0-2で惜敗。明徳はその後準決勝、決勝を圧勝。
そして宇和島東とは対照的に帝京第五は愛媛2位ながら明徳との対戦を回避し、大した強豪とも当たらず決勝まで進出。しかし明徳との実力差はくっきりで2-11の大敗。
ちなみにこの年の四国大会は準々決勝で県1位校が全敗するという下剋上の大会でもあった。

今回の帝京第五はあまり強い相手に勝っておらず(前年四国大会王者でこの年の選抜準優勝の高松商にコールド勝ちしたが、高松商は旧チームより戦力ダウン)、とても四国2位の実力があるとは思えない。
愛媛大会で帝京第五に勝って優勝し、明徳義塾に善戦した宇和島東が2016年秋季四国大会の事実上の準優勝と言える。
ましてや帝京第五は高野連が嫌いそうなヤンチャ私立、宇和島東は進学校とは言えないが公立の古豪で1988年に選抜優勝の経験もある。
これは是非宇和島東を逆転選考すべきだろう。

選考結果:明徳義塾、帝京第五  補欠:英明、済美

また決勝進出2校がすんなり選出。そして宇和島東はかすりもせず議論にもあがらず、補欠からも落選。
帝京第五は四国大会2試合連続コールド勝ちしたのに対し、宇和島東は明徳義塾を2失点に抑えたが完封負けなので打力は帝京第五のほうが上だったという声もあるが(でもセンバツは打力より投手力重視だよな)。

四国大会0勝と3勝の3勝も差があっては優勝校との試合の点差と直接対決の成績を持ってしても、逆転選考されることはないのか。
いや県1位の1回戦シード校は地区大会1勝分がカウントされるわけだから、実際は四国大会1勝と3勝の2勝差のはずなんだが。二階級の逆転選考は2003年の北信越だけが特別だったのか。

一関学院無情の落選(2009年)

2008年秋季東北大会
決勝光星学院7-1一関学院
準決勝光星学院6-3花巻東 一関学院2x-1利府(延長14回)

2008年秋季岩手大会
決勝花巻東9-2一関学院

2006年、2008年と東北大会準決勝敗退ながら、当時存在した希望枠で2度選抜に出場した一関学院だが(21世紀枠などを含む特別枠で2度選出されたのは一関学院が唯一)、そのつけが回ってきた結果になったのが2009年。
一関学院は東北大会準決勝で延長14回の激闘の末、利府にサヨナラ勝ちで決勝進出。だが決勝では光星学院に1-7で完敗した。9回に1点を返したが、決勝でなかったら7回コールドとなるスコアであった。
準決勝で光星学院に敗れた花巻東は3-6のスコア。1-7と3-6程度の差なら普通なら逆転選考はない。しかし花巻東は県1位、一関学院は県2位で、岩手大会決勝では花巻東が9-2と大勝していた。さらに花巻東は世代ナンバー1投手、菊池雄星がいた。

選考結果:光星学院、花巻東

準優勝の一関学院が落選し、準決勝敗退の花巻東が逆転選考された。東北大会準優勝校の落選は1998年の青森山田以来11年ぶりとなった。
このくらいの逆転選考は珍しくないのだが、客寄せパンダになりそうなドラフト1位候補の菊池を出したいための選考だという批判もあった。結果的に花巻東はセンバツで準優勝するので正しい選考だったと言える。
一関学院にとっての悲劇は東北大会準決勝でサヨナラ勝ちしていた利府が21世紀枠に選ばれたこと。しかもセンバツでは利府も21世紀枠の学校として8年ぶりベスト4進出を果たし、準決勝で花巻東との選抜史上初の東北対決を実現させている。
東北大会ベスト4で一関学院だけが落選という一人負けで、一関学院にとっては悲劇の選考となった。

最悪編

火災落選事件(1970年 帝京商工)

1969年秋季東京大会
決勝日大三2-1帝京商工
準決勝日大三2-0日大二 帝京商工2-0堀越


東京の帝京商は、1939年夏の東京大会で早稲田実、日大三を破って優勝し、悲願の甲子園初出場を決めた。しかし、出場資格のない高等小学校の選手を出場させた問題で出場辞退したのである(ちなみに準優勝の日大三も同じ理由で出場辞退し、甲子園に東京代表として出場したのは早稲田実だった。)。
2年後の1941年夏、帝京商は再び東京大会で優勝し甲子園初出場を決めた。しかし今度は第二次世界大戦の影響で全国大会が中止となってしまったのである。

帝京商工の校名を変更、過去2度の幻の甲子園を味わい今度こそ甲子園をと意気込んで迎えた1969年秋の秋季東京大会で準優勝。当時の東京枠は2枠あり、決勝に進出した帝京商工は悲願の甲子園初出場を確実にしたかに思われた。決勝戦は接戦、逆転選考が起きる要素は全くない。しかし・・・

選考結果:日大三、堀越

・・・えー!帝京商工が落ちた!しかも2校目に選ばれたのは優勝した日大三に負けた日大二にでもなく、直接対決で帝京商工に負けた堀越。直接対決で勝ったほうが落選、負けたほうが選出という逆転選考。
帝京商工の落選理由は、秋季大会後の11月に学校で火災が発生し、選考委員会に提出が必要な資料が一部欠損したからであった。といっても欠損したのは練習試合たった3試合のデータなのであるが。
納得いかない帝京商工は高野連の佐伯達夫会長に対し大阪地裁に訴訟を起こした。史上唯一の裁判沙汰になった選抜選考。高野連は裁判中、帝京商工に対外試合禁止処分を言い渡した。裁判は高野連側が「秋季大会はセンバツの予選ではない。成績優秀と言うだけは出場できない」と主張。結局判決では「選抜大会は招待大会である以上、主催者側に従うべき」として帝京商工が敗訴。三たび帝京商工の甲子園初出場は幻に終わった。

火災で資料の欠損による落選というのはまあ的を得ている。もし現代でも同様のことが発生したら落選するのだろうか?だが当時は早実並に人気のあった堀越を選出するために帝京商工を蹴落としたという説もある。帝京商工は結局甲子園出場を果たせないまま1989年に廃部。2008年に野球部が復活したが、未だ甲子園初出場は果たせていない。

史上最悪の選考 前座(2022年 21世紀枠)

21世紀・平成後期以降は多少の迷選考はあっても、あまりに無茶な逆転選考は行われなくなった。2019年秋の北信越と2020年秋の東北では、同県2校の決勝戦になった上に決勝戦で大差がつき、試合内容・地域性ともにマイナスになりながら優勝・準優勝校がすんなり選出された。
まあ21世紀枠という選考委員会のガス抜き枠ができたことにより一般枠でのごり押し選考が緩和されたということもあるが、ネットやSNSの流行により無茶な選考は非難のもとでもあるからだ。
しかし平成が過ぎ、令和になって3年目にここ半世紀で最大級といっても過言ではない逆転選考が出た。

まずはその本題に入る前に前座として、21年目を迎えた21世紀枠の選考。
県大会ベスト16以上、参加校が129校以上の都道府県ならベスト32以上であれば戦績を問わず選出されるチャンスがある21世紀枠だが、ちゃんと甲子園で試合になるようにある程度の成績も考慮されており、ほとんどは秋季地区大会まで進出した学校、または都道府県大会で強豪校に善戦した学校が選出されるようになっている。2016年の長田や2019年の石岡一は地区大会に出場できなかったが、長田は甲子園常連の神港学園に善戦したこと、石岡一は甲子園出場経験校の明秀日立、土浦日大を破り、甲子園常連の藤代に惜敗したことがプラスになった。
ところが2021年の秋季大会は甲子園未出場や20年以内に甲子園出場がない公立校が不振。ほとんどの都道府県で甲子園常連校や私立校が地区大会を独占し、21世紀枠の候補になりそうな学校があまりに少ない。
それまで20大会中13回21世紀枠に選出されている東北地区もこの年は21世紀枠不作の年となった。東北地区候補になりそうだったのは秋田大会準優勝で東北大会に出場した大館桂桜だけと言われた状況。しかし・・・

大館桂桜が21世紀枠推薦辞退 来春の選抜大会
日本高校野球連盟は24日、来春の第94回選抜大会の21世紀枠候補に秋田県高野連が推薦した大館桂桜から、部員が他人の自転車を無断使用する不祥事があったため推薦を辞退する届け出があり、了承したと発表した。

2021年11月24日

なんと大館桂桜が不祥事でまさかの推薦辞退。本命不在となった東北推薦は福島大会ベスト8の只見が選ばれた。その只見の戦績だが。

只見戦績
2回戦 2-1白河旭
3回戦 7-6相馬東(延長11回)
4回戦 7-5会津学鳳
準々決勝 0-6いわき光洋

ご覧のように甲子園出場経験校との対戦が1つもない。そして甲子園未出場のいわき光洋に0-6のコールド寸前の完敗を喫している。

2022年21世紀枠地区推薦
北海道札幌国際情報 北海道大会ベスト4
東北只見 福島大会ベスト8
関東太田 群馬大会ベスト8
東海相可 三重大会ベスト8
北信越丹生 福井大会4位
近畿伊吹 滋賀大会ベスト8
中国倉吉総合産 鳥取大会準優勝
中国大会初戦敗退
四国高松一 香川大会ベスト8
九州大分舞鶴 大分大会準優勝
九州大会初戦敗退

地区推薦9校中6校が県大会敗退校、地区大会に出場した学校はわずか2校しかない。ただし北海道は地区大会に相当する大会がないが、札幌国際情報は北海道大会ベスト4なら地区大会出場相当としていいだろう。
東日本は札幌国際情報、西日本は大分舞鶴が実力では突出している。とりあえず西日本の大分舞鶴は当確と言っていいだろう。問題は東日本と3枠目だ。
実力でナンバー1の札幌国際情報は21世紀枠的要素が少ない。設備や選手集めは私立並に恵まれている。困難克服要素では只見に分があるが、福島大会ベスト8敗退ではいかんせん実力不足だ。

21世紀枠選考結果 東日本:丹生 西日本:大分舞鶴 3枠目:只見

西日本は下馬評通り大分舞鶴だったが、東日本は11年選出がなく9地区で最も21世紀枠選出から遠ざかっていた北信越の丹生だ。そして3枠目には只見が選ばれた。
只見は前年まで福島大会でベスト8にも入ったことがなかったことから、ネット上で「史上最弱」と揶揄されるほどだった。そしてこの21世紀枠の中でも最弱クラスの只見の選出はのちの伏線になる。

史上最悪の選考(2022年 聖隷クリストファー)

そして日本中を騒然とさせた史上最悪の選考の本題である。

2021年秋季東海大会
決勝日大三島6-3聖隷クリストファー
準決勝日大三島10-5大垣日大 聖隷クリストファー9-8至学館

これはもはや議論の余地なく決勝に進出した2校で決まりだろう。決勝戦が6-3の接戦では優勝した日大三島はもちろん、準優勝の聖隷クリストファーも落とす理由はない。しかも準決勝敗退の
大垣日大は7回コールド寸前の5-10の完敗、至学館は準優勝の聖隷クリストファーに直接対決で敗戦では逆転選考の要素はどこにもない。
難点があるとすれば地域性だが、近年では決勝戦が同県同士の対戦になってもそのまま2校が選出されてる以上、問題ない。実際選抜出場校を予想するすべての雑誌が東海地区は「日大三島と聖隷クリストファーで当確」と書き、選考ファンは議論の余地がない東海地区には目もくれず、毎年揉める関東・東京最終枠や中国・四国最終枠に注目していた。一部記者は日大三島とともに聖隷クリストファー高校に「選抜出場当確」校として取材に行き、選抜選考会当日には聖隷クリストファーの甲子園初出場の瞬間を見届けるために多くのマスコミが押し寄せていた。一方準決勝で敗退した学校にマスコミは全く行かなかったほど。もう誰もが決勝に進出した2校の選抜選出を確信して疑わなかった。

さて、聖隷クリストファーは過去に夏の静岡大会ベスト4進出の経験があり、2020年は夏の静岡独自大会で優勝するも新型コロナウイルスで甲子園は中止。幻の甲子園を味わった聖隷クリストファーがついに悲願の甲子園初出場をつかもうとしていた。
迎えたバーチャル中継での選抜出場校発表。注目された関東・東京最終枠は東京大会準優勝の二松学舎大付が選出され、5年ぶりに東京から2校出場が決定した直後のことだった。

選考委員会 鬼嶋一司「東海地区は、1校目に日大三島高校、2校目に大垣日大高校を選出します。」

(つд⊂)ゴシゴシ

選考結果:日大三島、大垣日大

・・・えー! お、大垣日大!? 聖隷クリストファーが落ちたー!?
一体何があった?地域性か?

選考理由:「大垣日大のほうが個々の力量で上回った」
「個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで賛否が分かれたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とした。」


地域性は関係ないとのこと。個人の力量って、野球は個人競技ではなく団体競技だろ!と筆者じゃなくても各記者や著名人から突っ込まれた。
選考理由には大垣日大が好投手を擁する静岡、東海大会優勝候補筆頭だった享栄を破ったことが評価されたとも書いてあったが、静岡は県3位校。県2位の聖隷クリストファーよりも静岡大会の順位が下である。享栄は近年復活しつつあるものの1996年夏を最後に四半世紀以上甲子園出場がない。さらに聖隷クリストファーは岐阜大会で大垣日大に勝った県1位の中京を破ったことはなぜ評価されないのか?
選考理由は建前で、大垣日大を選出したい理由でもあったのか、あるいは聖隷クリストファーに不祥事の前科か花巻東みたいなラフプレーがあったのか。

中京枠説
1つ考えられたのは高野連は否定してるとはいえ地域性。2020年の北信越と2021年の東北が同県から2校ダブル出場してる以上、今さら地域性で逆転選考はどうかと思うが、東海地区には特殊な地区割りがあった。それは愛知・岐阜・三重の3県が「中京」という地域に所属していて、静岡のみ中京に入らないのだ。中日新聞の購読地域は愛知・岐阜・三重で、静岡のみ静岡新聞。「東海三県」という用語もあるくらいだ。
そのため「中京枠」を確保するために静岡2校選出を阻止したのではないかと考えられたが、真相はわからない。

走塁妨害問題説
聖隷クリストファーは伝統進学校ではないが、キリスト教系の学校でそこまでヤンチャな私立というわけではない。だが一部でこんな説が。 中京に故意に走塁妨害を狙いにいったプレーが品位に欠けるという意見。それが原因で落選したのではないかという憶測。こんなの問題あるだろうか?これが落選理由なら伏せずにはっきり言うだろうし、根拠もなにもない。これは憶測だろう。

祖父孫出場
大垣日大に早実や日大三のような政治力はなさそう。だがこんな話題が。 初の3元号勝利監督、甲子園史上最年長勝利監督、そして祖父孫での甲子園出場を阪口桂三に飾らせるために忖度したという説。後述のような組み合わせ抽選結果で結局この説が最有力に。とはいえ真実は闇の中である。

この選考にはネット上で大バッシングの嵐、プロ野球選手や高校野球監督や文部大臣からも批判された。2022年は北京冬季オリンピックの年だったためオリンピック中はそちらに話題が行ったが、その間にも高校野球関連サイトでは炎上が続き、ついに静岡県知事や浜松市長も抗議する事態に。市長が抗議をしたのはあの太田市商以来20年ぶり。
だがそのときと違って高野連は丁寧な説明もなくこの問題を幕引きしようとする。そのような高野連の態度でさらに炎上した。

センバツ落選の聖隷クリストファーに大会主催者「これ以上の説明差し控えたい」署名提出待たず“幕引き”強調

昨秋東海大会で準優勝した聖隷クリストファー(静岡)が第94回センバツ高校野球(3月18~30日・甲子園)の出場校から漏れて疑問の声が上がるなか、大会主催者の日本高野連と毎日新聞社は10日、「詳細な内容は公開になじまない」、「当該校にもこれ以上の説明を差し控えたい」との方針を発表した。
「出場32校と補欠校は最終のもの」と今回の騒動については“幕引き”を強調。「選考のあり方や選考経過の説明方法などについて今後検討していく」とした。
1月28日の選考委員会では東海地区2枠目に、東海大会で準優勝した聖隷クリストファーではなく、同4強の大垣日大(岐阜)が選出。聖隷クリストファー野球部OB会は6日からインターネット上で「33校目の選抜校として甲子園へ」と題した署名活動を始め、10日時点で1万7000人を突破している。
22日まで活動を行い、集まった署名は高野連に届ける予定だが、高野連など大会主催者はそれを待たずしてコメントを発表した。

2022年2月10日

結局聖隷クリストファーの選手や関係者やファンの想いは届かず、迎えた選抜の組み合わせ抽選会。ここでまたさらに物議を醸す事態に。

初戦:大垣日大-只見

なんと大垣日大の初戦の相手は福島大会準々決勝敗退で、21世紀枠選出校でも過去最弱レベルと言われる只見。高野連は「大垣日大のほうが聖隷クリストファーより甲子園で勝てる」と明言した故、よほど大垣日大を初戦敗退させるわけにはいかなかったのか。
大垣日大は初戦はさすがに勝利したが5-1というなんとも言えないスコアに。そして結局2回戦で星稜に3-5で敗退した。

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