選抜迷選考集 関東・東京編

1955年までは東京も関東大会に出場していたが、人口が最多の首都東京は優遇され、初戦敗退でも必ず東京から1校選出されるためか、1956年以降関東大会に参加せず関東大会と東京大会は分離された。
東京でも特に六大学の系列校が優遇選考されることが多く、早稲田実や明治は東京大会準優勝以上なら必ず選出されている。

当落線上の魔術師 東京六大学系列校選考集~昭和編~(1949年~1965年)

1948年秋季関東大会
決勝日川3-1桐生工
準決勝日川7-3宇都宮工桐生工12-0熊谷
準々決勝日川3-1千葉宇都宮工1-0川崎工桐生工9-5明治熊谷8-0龍ヶ崎一

当時の関東の選抜出場枠は2枠。当時は東京が関東大会に出場していたが、東京には無条件で1枠与えられる。実質東京と東京以外の関東に1枠ずつという現在に近い形であった。
現代の選考なら優勝した日川は確実だが、当時は地区大会で優勝しても当確とは言えない状況であった。
東京枠は東京大会優勝の明治が有力か。

選考結果:日川、慶応二

2校目はなんと東京大会敗退の慶応二。実は当時は東京枠とは名ばかりで実質は「早慶枠」だったのだ。早慶枠が東京枠に転じたというのが正しいか。
早稲田実、慶応普通部、慶応二(慶応商工)の3校から選出されることになっていたのだ。


1962年秋季東京大会
決勝
:日大一3-1早稲田実

1962年秋季関東大会
決勝
:上尾5-1宇都宮商

この年の関東・東京の選抜出場枠は合わせて3枠で、それぞれ1・5枠ずつ。両地区の2位が最後の出場枠を争う。
1960年からここ3年連続で関東・東京の3枠目が関東2位が選出されていたが、今回は六大学の天下早稲田実。さらに30名弱の選考委員会のうち10名が早稲田大学出身、他にも六大学出身が多数。 これではもはや出来レース状態。

選考結果:上尾、日大一、早稲田実


1957年秋季東京大会
決勝
:早稲田実3-1明治

1957年秋季関東大会
決勝
:宇都宮工5-0前橋

時系列が前後するが1957年の秋季東京大会は早稲田実と明治の六大学系列校同士の決勝戦。優勝した早稲田実はもちろん当確だが、準優勝の六大学系列校の一角明治も出したい存在。

選考結果:早稲田実、宇都宮工、明治
選出理由:「全国でもAクラスと召される早実を対象に実力を比較し、早実に3-1で惜敗した明治高の粘り強い打撃が買われ、明治の優位が決定した」


やはり3枠目は六大学。さらに早実を褒め称えて、早実と善戦したから明治を選出したとのこと。
関東大会と東京大会の決勝スコアを見比べればこれは当然の結果だが、関東大会準優勝も群馬ナンバー1の進学校前橋だったのだが。北関東の進学校では天下の東京六大学には勝てなかったか。


1964年秋季東京大会
決勝
:荏原5-0明治

1964年秋季関東大会
決勝
:東農大二2-0甲府商

東京大会決勝は5-0と大差がついた。関東大会は2点差の接戦。7年前と逆の状況。これでは普通なら3枠目は関東が選ばれる。だがしかし・・・

選考結果:東農大二、荏原、明治

このスコアなのに明治。しかも荏原と1枠目を争い「優劣つけにくい」「わずかな差」などと、5-0で負けているのに荏原と僅差だと評価。
1枠目はなんとか荏原が死守したが、荏原と同じくらいの実力と評され最後の枠は明治へ。
早稲田実は2009年、2013年も東京大会準優勝で選出(2009年は下記参照)。このように東京六大学系列校は特に優遇選考が目立つ。

選抜出場決定ニセ電話事件(1993年)

1992年秋季関東大会
決勝常総学院7-5横浜
準決勝常総学院4-1佐野日大横浜10-0市船橋(6回コールド)
準々決勝常総学院4-3法政二佐野日大6-3暁星国際横浜4-1関東学園市船橋4-3大宮東

1992年秋季東京大会
決勝世田谷学園8-7国士舘
準決勝世田谷学園14-10早稲田実国士舘13-6帝京

関東の選抜出場枠は5枠、東京は2枠、当時は関東と東京の比較はなく枠が与えられていた。優勝の常総学院、準優勝の横浜、ベスト4で3点差負けの佐野日大まで3校は確実だろう。
同じくベスト4の市立船橋は準決勝で横浜に6回コールド負けし微妙になってしまった。そして準々決勝はすべて3点差以内の接戦。これは非常に難しい選考になった。
このような稀に見る混戦の年となったことがまさかの事件を招いてしまうのである。

市立船橋は準決勝でコールド負けしたが、4枠ならともかく5枠あるので5枠目までには入れる可能性は非常に高い。公立校というのもプラス。
準々決勝敗退4校のうち、優勝した常総学院に1点差負けの法政二が戦績では最も有利。さらに高野連が愛する東京六大学系列校でもある。この戦績で六大学系列校なら5枠目の最有力候補といえるが、横浜が当確なため地域性で不利。前年も東海大相模が当確でありながら横浜が5枠目で選出されたため、今年は5枠目での神奈川の2校選出はないのでは?という意見もあった。
続いて関東学園大付。優勝した常総学院と並んで戦力が高い横浜と対戦し、ベスト4に群馬の学校はないため地域性で有利。地域性で法政二、対横浜戦のスコアで市立船橋を押しのけての選出もありそう。

強打を誇り総合力の高い大宮東は1点差負けで地域性も問題ないが、負けた相手の市立船橋が準決勝でコールド負けしたのが最大のマイナス。準決勝大敗のチームに負けた学校の5校目での選出例はなく、市立船橋も選出微妙である以上厳しいのではないだろうか?甲子園未出場でも名門でもなく、公立ではあるが偏差値の低い普通の学校だしな。だがこの年の大宮東は決勝進出の常総学院、横浜と同等以上の実力があると言われてる。総合力では有利だ。
暁星国際は準決勝敗退の佐野日大に3点差負けで、1回戦シードのため関東大会勝利なし、同県千葉の市立船橋がベスト4入りなので相当厳しい。毎日新聞の展望でも暁星国際は圏外だった。ただ千葉大会決勝で市立船橋に勝利して優勝しているため、市立船橋が落選ならチャンスあるのでは?とも思ったが(それでも関東大会2勝の市立船橋を差し置いての選出は難しいか)。

ということで市立船橋、法政二、関東学園大付、大宮東、暁星国際の5校で残り2枠を争うが、◎市立船橋 ○法政二 △関東学園大付、大宮東 ×暁星国際、といったところか。
市立船橋は一番優勢、暁星国際は圧倒的不利で新聞では圏外。法政二もスコア的にはかなり有利だが地域性がどう響くか。最後の5枠目争いは法政二を関東学園と大宮東の三つ巴の展開が予想されそう。6回コールド負けが響いて市船橋が落選し法政二&関東学園が選出という可能性もある。

一方で東京は決勝進出の2校で決まりだろう。高野連のお気に入り早稲田実はベスト4に進出し優勝校の世田谷学園と対戦したが、準優勝の国士舘が1点差負けの接戦では逆転の余地はない。
展望でも一応名前はあげられているがほぼ世田谷学園と国士舘の2校で当確。昔だったらこのくらいの位置から品位に優る学校の逆転選考は珍しくもなかったが、平成に入った現代で無茶な選考はなるべく行われなってきている。さすがに今回は早実は無理か。

選考結果
関東:常総学院、横浜、佐野日大、市船橋、大宮東  補欠:関東学園大付(1位)、法政二(2位)
東京:世田谷学園、国士舘  補欠:早稲田実


6回コールド負けしたがベスト4進出の市立船橋はわかるが、その市立船橋に負けたことで厳しいと思われた大宮東が選ばれ、優勝校に1点差の惜敗で有利と思われた法政二は関東学園大付も下回り補欠2位という波乱の結果に。このくらいだとそこまで驚くべき選考ではないのだろうが、法政二高と関東学園大付は無念の落選。
東京は順当に優勝・準優勝の2校が選出で波乱なし。やはり早稲田実は今回は逆転選考は無理だった。
だがこの番狂わせの選考が霞むような前代未聞の事件が選抜選考会と同時刻に起きていた。惜しくも落選した関東学園大付と法政二高に追い打ちをかける事件である。

プルルルルル・・・
法政二・関東学園・早実「はい?」

「もしもし、高野連のサトウですが・・・センバツの出場が決まりました

なぜか落選した法政二高、関東学園大付、早稲田実に高野連から出場決定の電話が。だがしかし・・・

5校にニセ電話
第65回選抜高校野球大会の出場校が決まった1日、出場を逃し補欠となった関東学園大付属高(群馬)と法政二高(神奈川)の2校に、「出場が決まりました」というウソの電話がかかっていたことがわかった。
また、出場を決めた大宮東高(埼玉)や市立船橋(千葉)、世田谷学園(東京)にも正式連絡の前に、大会事務局からとは別のニセとみられる出場決定の電話がかかっていた。
「いたずらとは言え悪質。非常に卑劣です」「いったい、だれが何のために」と関係者は怒りをつのらせている。

群馬県館林市にある関東学園大付高にニセ電話がかかってきたのは、同日午後4時14分ごろ。校長室で知らせを受けた山口澄夫校長によると、電話は中年の男の声で「高野連ですが、選抜の出場が決まりました。」と告げたという。
選考委員会から電話があると思っていた同校長は、おかしいと思ったが、男性は「(関東で最後の)5番目に選抜されました」などと言ったために信用し、「ありがとうございます」と言って電話を切った。
同校長はその後、グラウンドで練習中の選手らの所に出向き、「出場決定」を伝えた。選手らは、戸ヶ崎弘美監督や杉岡豪主将を胴上げするなど大喜び。館林市も市長の喜びのコメントを発表した。
ところが、午後4時半ごろになってラジオで出場校を確認していた職員が名前のないことに気づき、ニセ電話であることがわかったという。
いたずらだとわかり、満面笑顔の選出たちは一転、落胆の表情に。涙を浮かべる部員もいたという。

また川崎市中原区の法政二高には同日午後4時ごろ、男性の声で「高野連のサトウです。出場が決まりました」との電話がかかった。
一方、大宮東高には同日午後3時40分ごろ、校長室の直通電話に、やはり男性の声で「そちらが選抜出場に決定しました」との電話があった。
早速、校門脇に「祝甲子園出場決定」と書いた横断幕を掲げるなどした後の午後4時20分ごろ、今度は「本物」の電話がかかってきた。

選抜高校野球大会出場が決まった学校への連絡は、選考委員会総会で地区ごとに承認が得られた後、大会事務局から各学校へ出場諾否の確認をする電話と各都道府県高野連に対しても選考結果を知らせる電話が行われる。
同事務局では「こういういたずらは初めてで、困ったことだ。事態の掌握に努めているが、不愉快なこと。中でも補欠校になった学校に対してのいたずらでは大変気の毒なことになったと思う。来年以降、出場校への連絡方法について検討したい」と話している。

1993年2月2日 朝日新聞
選抜高校野球大会出場が決まった1日午後、関東・東京地区で候補に上がっていた高校にニセ電話が次々とかかったが、同様の電話が早稲田実高にもかかっていたことがわかった。

1993年2月4日 朝日新聞夕刊

高校野球の有名なハプニングとして知られる選抜出場ニセ電話事件。直後に発覚したのは5校だったが、翌日に早稲田実にも電話がかかってきていたことが判明し6校に。
本当に出場を決めた市立船橋、世田谷学園、大宮東にとっては問題にはならなかったし、選手に知らせる前にいたずら電話だと気付いた法政二と早稲田実はまだよかった。
校長がいたずら電話だと気付かず出場決定を選手に知らせてしまった関東学園大付は最悪の結末になった。ニュース記事のように選手は甲子園出場に歓喜し、胴上げまでした。数分後にいたずらだと分かり、うなだれて泣き出す選手もいた様子の写真が朝日新聞に載せられていた。
このような卑劣な事件もあったこの年の関東の選抜選考会

選出理由:「残る1校は大宮東、関東学園大付、法政二の3校の比較となり、法政二は神奈川県から横浜が選ばれてたため地域性が考慮され選外へ。」
「エース貝沼の防御率、チーム打率などのデータが関東学園大付を上回っていた大宮東が最後の椅子を獲得した。」


3校の比較でまず法政二は地域性で外れ、関東学園大付と大宮東の最終比較で県大会からのデータが上回った大宮東が選ばれたとのこと。
そういうと納得できるが、法政二は優勝校に1点差の惜敗と当落線上で一番戦績では優秀でありながら補欠2位というのもいかがなものか。どうやら前年も神奈川が5枠目で選ばれて2校選出されたという地域性がかなり響いたようだが。

この年の大宮東はベスト8止まりだが決勝に進出した常総学院や横浜と同等以上の総合力があったようで、甲子園で期待できる大宮東を出したいためにまず市立船橋を準決勝コールド負けは不問で選出し(まあここまでは問題ないが)、一騎打ちになったら分が悪そうな法政二を先に落とし、関東学園との一騎打ちに持ち込んだ印象。
(法政二とは地域性以外で大宮東が勝てる要素が少ないが、大して強豪でもなく3点差負けの関東学園なら負けた相手の成績以外は大宮東がすべて上回れる)
出したい学校にとって勝ち目の薄い学校を最後の一騎打ちに持ち込む前に落とすという、ウィーケストリンク(2002年にフジテレビで月曜夜7時に放送されていたクイズ系ゲーム番組)的なゲーム展開をした印象がある。
大宮東は初出場のセンバツで準優勝の好成績をあげたので正しい選考であったのだろうし、このくらいの逆転選考過去と比べれば珍しくない。とはいえ過去にこのような不可解選考をやっているからおもしろがってこんないたずらをする者が現れるのだろう。

マスコミは候補にはあがっていたが相当厳しいと思われていた早稲田実にもかかっていたとは思わなかったのか、早稲田実だけ発覚が遅れた。
ニセ電話があった学校を見てみると

高校名出場可否ニセ電話
常総学院出場・関東1校目なし
横浜出場・関東2校目なし
佐野日大出場・関東3校目なし
市船橋出場・関東4校目15時43分ごろ(4番目)
大宮東出場・関東5校目15時38分ごろ(2番目)
世田谷学園出場・東京1校目15時40分ごろ(3番目)
国士舘出場・東京2校目なし
関東学園大付落選・関東補欠1位16時14分ごろ(6番目)
法政二落選・関東補欠2位16時10分ごろ(5番目)
早稲田実落選・東京補欠1位15時30分ごろ(1番目)

出場確実と言われた常総学院、横浜、佐野日大、確実ではないがかなり有利な国士舘は狙いから外したようで、当確の世田谷学園以外はすべて当落線上の学校を狙ったようだった。
毎日新聞の下馬評に名前があがってたし、犯人は早稲田実も当落線上にいると認識していたのだろう(しかも1番最初にかけている)。この時代から早実の優遇選考をわかっていたのか。
暁星国際は関東大会準々決勝敗退校で唯一ニセ電話がなかった。下馬評に名前すらなかったせいか、犯人も狙いになかったようだ。

市長選考抗議事件(2002年 太田市商)

2001年秋季関東大会
決勝宇都宮工4-3浦和学院
準決勝宇都宮工4x-3前橋(延長10回)浦和学院8-1太田市商(7回コールド)
準々決勝宇都宮工5-1土浦三前橋6-3甲府工浦和学院6-4水戸短大付太田市商3-2市船橋

1993年にニセ電話事件で問題になった9年後、関東地区でまたしても思わぬ事件が起きた。21世紀枠新設の影響もあって一般枠が減り、この年は関東の選抜出場枠が4枠。
2001年秋季関東大会で群馬の公立校が2校ベスト4に進出する躍進を見せたが、太田市商が準決勝で浦和学院に痛恨のコールド負け。前橋もベスト4に進出したこともあり選抜微妙になった。
太田市商は県1位で、群馬大会決勝で前橋に勝っているところは有利だったが・・・。

選考結果:宇都宮工、浦和学院、前橋、水戸短大付

太田市商はコールド負けと地域性が響いて無念の落選。
納得いかない人もいるだろうが4枠の地区で準決勝コールド負けで選抜落選は別に珍しいことではない。だがこの選考に大物人物が異議を唱えるとんでもない事態に。

関東大会4強なぜ選抜漏れ
来月開催される第74回選抜高校野球大会で、昨秋の関東大会で4強となりながら、出場校の選考に漏れた群馬県の太田市立商業高について、同市の清水聖義市長は4日、選考基準の公開を求める手紙を高野連の牧野直隆会長に送った。
同校は昨秋の同県大会で優勝し、関東大会4強に入った。 だが、1月末の出場校発表では4枠の出場校発表では4校の出場枠となった関東(東京を除く)で、4強のうち宇都宮工(栃木)、浦和学院(埼玉)、前橋(群馬)の3校が選ばれ、太田市立商だけ「補欠校」となった。残り1校の枠は8強のチームから水戸短大付(茨城)に決まった。
清水市長は、手紙の内容を公表した。それによると、「公平に選抜するとはどういうことなのでしょうか」「説明責任があるのではないか」と高野連側の対応を求めている。
手紙には、6日に配信される同市のメールマガジンの市長コラムの原稿も添付した。その中で「強敵と言われる作新学院、市立船橋を破って関東でベスト4になった。子ども心ながら、甲子園は見えたはずである」と記述。「選考する側の主観で決められるとは思っておらず、『子どもたちの心をもてあそんでいる』としか言いようがない」と指摘している。
一般的に選抜大会は地域的なバランスなどを考慮して選ばれる。例えば第69回大会の東北の出場校には、地区大会で優勝した光星学院(青森)が選ばれたが。同じ青森の準優勝校・青森山田は選ばれず、4強の平工(福島)が出場している。

「関東大会は予選とは違う」 高野連事務局長
高野連の田名部和裕事務局長は「秋季地区(関東)大会は選抜の予選ではないと説明するほかありません」と話している。

2002年2月5日 朝日新聞
大会予選なく地域性考慮
日本高校野球連盟(牧野直孝会長)は12日、選抜高校野球大会(日本高野連、毎日新聞社主催、3月25日開幕)に太田市商(群馬)が選ばれなかった理由などを公開するよう求めた太田市の清水聖義市長に対し、選抜大会は予選がなく地域性も考慮されるなどとする選考基準・方法を記した返答を郵送した。
清水市長は、昨秋の関東大会4強の同校ではなく、8強の水戸短大付(茨城)が選ばれたことに疑問を示していた。
これに対し日本高野連は、選抜大会の選考基準として「校風、品位、技能ともに高校野球にふさわしい学校、野球部」各都道府県連盟から推薦された中から地域性も考慮」「新チーム結成から11月30日までの試合成績、その関連資料を技能の参考にする」など6項目を列記した。
選考過程については「選抜大会は予選を持たないのが特色で、秋季大会は予選ではない。県大会や地区大会での成績と逆転したような事例はいくつもある。あくまで収集したデータと実際に視察した選考委員の判断によって決められる仕組み」と説明した。
その上で水戸短大付高が選出され太田市立商高が補欠にまわった理由を「両校が直接対戦した浦和学院高との試合内容や地域性を考慮した」と解説した。日本高野連の田名部和裕事務局長は「可能な限り選考理由などを回答させてもらった。これでご理解を得たい」と話している

選考する側の考えわかった
太田市の清水市長は12日夜、「選考結果の発表を待っていた子どもたちの気持ちを考えると釈然としないが、選考する側の考えはわかった」と述べ、高野連の回答をもって一件落着とする考えを明らかにした。
同日夕、一部のマスコミから同高野連の回答をファクスで受け取った清水市長は、市内で記者会見。
太田市立商高が4強入りした昨秋の関東大会が選抜大会の「予選ではありません」とする同高野連側の説明に、清水市長は「予選ではないということなら、どうしようもない」とあきらめた表情で話した。

2002年2月13日 朝日新聞

今まで伝統公立進学校、東京六大学系列校贔屓のエゴによる選考を平然と繰り返してきた高野連だったが、それを「子どもたちの心をもてあそんでいる」という批判。
コンスタントに甲子園出場校を出してる県庁所在地前橋市と違って、甲子園出場が少ない太田市にとってはつかみかけていた待望のセンバツ出場が水の泡になったことは重大なのだろう。9年前のニセ電話事件の最大の被害者となったのも同じ群馬県東毛地区の館林市にある関東学園大付だった。

選手も学校関係者も何の疑問もなく納得させてきていたが、市長という立場の者からクレームをつけられてはさすがの高野連も対応せざる得なかった。
選考基準と「秋季地区大会は選抜の予選ではない」という方針を示してなんとか和解したようだ。
「予選ではないということなら、どうしようもない」、ごもっともである。筆者も選抜高校野球の選考を批判するつもりはない。

当落線上の魔術師 早慶系列校選考集~平成編~(2005年・2013年)

2004年秋季大会
決勝東海大相模5-3浦和学院
準決勝東海大相模4-1甲府工浦和学院10-8常総学院
準々決勝東海大相模3-0桐生第一甲府工3-2埼玉栄浦和学院0-0慶応義塾
(延長14回引き分け)
浦和学院6-0慶応義塾
常総学院2-0前橋商

2004年秋季東京大会
決勝修徳7-1日大豊山
準決勝修徳6-2帝京日大豊山7-0実践学園

早稲田の永遠のライバルといえば慶應。東京都港区三田から神奈川県横浜市港北区日吉に移転した慶應義塾高は早稲田実とは別の神奈川大会と関東大会に出場している。
上記のように慶応義塾も早稲田実と同様、東京に置いていた戦後直後は優遇選考されたことがあり、神奈川に移転して21世紀に入ってからも当落線上の秋季関東大会ベスト8の場合は優遇されるのか。
45年ぶりの選抜出場を目指し2004年の秋季関東大会に出場。前回の関東大会出場は1998年でそのときは初戦敗退で選抜出場ならず。その前は1961年までさかのぼる。

準々決勝で浦和学院と延長14回引き分け再試合(日没引き分け)の激闘を演じるも再試合で0-6の完敗。当落線上の関東大会ベスト8で終える。延長戦惜敗なら関東5校目の最有力候補になるが、再試合に持ち込んで再試合で完敗するとどうなるのだろうか。内容によっては評価を下げるとも言われてる。
さらに神奈川の東海大相模が当確なので地域性に難あり。東海大相模に神奈川大会で勝っているならともかく、慶応義塾は負けて県2位での出場である。上記のニセ電話事件があった1993年は法政二が準々決勝で1点差の惜敗でありながら地域性が響いて落選し、補欠2位に留まった。

秋季東京大会の方は決勝戦は6点差と差が開いた。準決勝も4点差がついており今年は関東・東京の最終枠は関東に行く可能性が高い。
ということで関東5枠目争いだが、慶応義塾の他にはベスト8に2校進出しながらともに準々決勝で敗れた群馬勢の前橋商と桐生第一が候補。どちらか片方が選ばれれば地域性で慶応義塾より有利。埼玉栄は負けた相手の甲府工が準決勝で敗退した上に地域性で厳しい。
前橋商、桐生第一、慶応義塾の3校の争い。対戦相手の成績では優勝した東海大相模に負けた桐生第一の方がベスト4の常総学院に負けた前橋商より上回るが、スコアでは前橋商が2点差負けで桐生第一が3点差負けと前橋商が上回り、県大会では前橋商が勝って県1位。
ということで群馬同士の優劣は前橋商が上回るのではないか?5枠目争いは慶応義塾と前橋商の争いに桐生第一がどこまで食い込めるかになりそう。

選考結果
関東:東海大相模、浦和学院、常総学院、甲府工、慶応義塾  補欠:桐生第一(1位)、埼玉栄(2位)
東京:修徳  補欠:帝京(1位)、日大豊山(2位)


最後の枠に滑り込んだのはやはり慶応義塾。地域性と再試合で大差がついたことは問題にならず、延長引き分け再試合を戦ったことはプラスになったか。
しかしこの年は慶応絡み以外の選考で「ん?」と疑問に思うところがいくつかある。
まず関東5校目はすんなり慶応で決まり、なぜか慶応と東京2校目の帝京の比較のほうが「白熱して長時間の議論になった」とのこと。そもそも関東と比較になる東京2校目がなぜ準決勝敗退の帝京?確かに帝京のほうが対修徳戦の点差は小さいが、1-7と2-6くらいの差ならそのまま準優勝の日大豊山のほうが上になるのが普通じゃないか?
そして群馬大会で前橋商に負けて県2位の桐生第一が補欠1位、県1位の前橋商が補欠からも落選。これもこのくらいの差なら県大会の直接対決の結果を重視するのが普通だよな。

その後慶応義塾は2007年と2008年は関東大会で当確ラインのベスト4以上に入りすんなり選抜出場。2015年まで慶応の秋季関東大会ベスト8止まりはこの1度だけだったため、慶応が当落線上で優遇されるのかはいまいち判断材料に欠けていた。
2016年の秋季関東大会で久々に準々決勝敗退(しかも1点差サヨナラ負け)に終わり、当落線上に立つのである(下記参照)。

早稲田実は21世紀に入ってからは2008年と2012年の秋季東京大会で準優勝。2008年は下記参照。


2012年秋季関東大会
決勝浦和学院3x-2花咲徳栄(延長10回)
準決勝浦和学院7-3宇都宮商花咲徳栄6-4常総学院
準々決勝浦和学院5-3前橋育英宇都宮商5-4霞ヶ浦花咲徳栄12-0習志野
(6回コールド)
常総学院6x-5佐野日大
(延長12回)

2012年秋季東京大会
決勝安田学園2-1早稲田実

早稲田実が決勝で安田学園にまさかの敗戦で、安田学園に甲子園初出場を献上。
1点差とはいえ甲子園未出場の安田学園に負けたのはかなりのマイナス。関東大会準々決勝は延長戦が1試合、1点差がもう1試合、優勝校に2点差が1試合と接戦ばかり。これは最後の枠は関東に行くのが普通だろう。
ちなみに安田学園はセンバツで史上最多初出場から甲子園9連敗中だった盛岡大付に甲子園初勝利を献上している。
だが早稲田実に最後の枠争いに負けはなし。

選考結果 関東:浦和学院、花咲徳栄、常総学院、宇都宮商  補欠:前橋育英、霞ヶ浦
選考結果 東京:安田学園、早稲田実  補欠:日体荏原


やはり早実クオリティは健在。とはいえ今回は関東大会の結果も早稲田実に追い風になっていた。
ここ数年あと一歩で甲子園出場を逃し続けている霞ヶ浦が、この年も初戦で強豪東海大相模に勝ちながら宇都宮商にまさかの逆転負けでまたしても関東大会準々決勝敗退。同じ茨城の常総学院がベスト4に進出したため地域性で厳しい。
常総学院に延長12回の末サヨナラ負けした佐野日大も、同県の宇都宮商がベスト4に進出したため地域性で不利(それをいったら早稲田実も東京2校目なわけだが)。
習志野は6回コールド負けでほぼ圏外。そのため優勝した浦和学院に善戦して県1位の前橋育英が関東5校目になった。

しかし前橋育英は1回戦試合なしのスーパーシードで、関東大会0勝が響いて早稲田実に有利に働いたと言える。
とはいえ県1位のスーパーシードは1勝扱いと見なすという解釈が2008年の宇都宮南、宇治山田商であったようだが。2008年は神宮枠による増枠の効果もあったとはいえ。
地域性とか関東大会未勝利とか、すべて早稲田実を出場させるための後付けの理由とも思えるが。
そして実は最後の枠をめぐる前橋育英と早稲田実の比較で、高野連はとんでもない失態をしてしまっていた。

選考過程:「最後に前橋育英と早稲田実業で投手力、攻撃力、守備力などを詳細に比較検討。攻撃力と守備力は互角と判断された。わずかな分かれ目となったのが投手力。西山、二山の早稲田実業投手陣が要所を抑える安定した力を発揮できたのに対し、前橋育英・高橋の制球力の不安定さを挙げる声が出た。
結局安定感のある早稲田実が最後の1枠となった。 今回は惜しくも補欠校となったものの、まだ1年生の高橋投手には選考委員の多くが将来性を感じており、今後への成長を期待する声もあった。」


ご存知の通り前橋育英は翌2013年夏の甲子園で初優勝し、選考委員会が「制球力が不安定」と酷評した高橋光成はこの半年後に2年生で優勝投手になる。さらに日本代表にも選ばれ、2014年のドラフトで西武に1位指名され、プロ1年目で5勝をあげた。
高橋光成は当時1年生ということでまだそれほど知られていなかったが、これは選考委員会は見る目がなかったと言わざる得ないだろう。一応最後のフォローはしていたが。

1988年の江の川同様、当落線上で落選した学校が夏の甲子園に出場して上位進出したことは救いだったとも言えるが、選出理由であまり余計なことを言うとフシアナだったことになるだろう。
早稲田実は秋季東京大会決勝に進出した大会での選抜選出率は100%。今後当落線の東京大会準優勝で落選する日は来るのか。


神宮枠大作戦~慶応が早実を救う~(2009年 早稲田実)

2008年秋季関東大会
決勝慶応義塾9-6習志野
準決勝慶応義塾8-4前橋商習志野6-3高崎商
準々決勝慶応義塾7-3木更津総合前橋商8-0水戸桜ノ牧習志野8-7下妻二高崎商6-1川口青陵

2008年秋季東京大会
決勝国士舘3-1早稲田実

ハンカチ王子斎藤佑樹フィーバーに湧いた2006夏の甲子園優勝から2年後の2008年の秋季関東大会と東京大会。関東の選抜出場枠は4.5枠、東京は1.5枠。関東5校目と東京2位が最後の出場枠を争う。
神奈川の慶応義塾が優勝した関東大会。この年は関東大会のほうがレベルが高く、最終枠は地域性でも有利な関東大会準々決勝惜敗の下妻二に回ることが濃厚。東京大会準優勝の早稲田実は大ピンチとなった。

だがチャンスはまだある。それは2003年に創設された「神宮枠」である。各地区の秋季大会優勝校が集う明治神宮大会で優勝した学校の地区は1枠増枠される。
国士舘か慶応義塾が明治神宮大会で優勝すればもう1枠増え、関東と東京合わせて7枠となって早稲田実が選抜に出場できる可能性が上がる。国士舘が優勝なら無条件で早稲田実の選抜出場が確実になる。

こうして慶応が六大学のライバルであり盟友でもある早稲田を救うべく明治神宮大会に臨んだ。この年の神宮大会は、明らかに慶応義塾と国士舘が優遇される組み合わせとなった。
神宮大会

近畿大会でPL学園を破って優勝した天理、甲子園最多優勝を誇る中京大中京(翌年夏の甲子園優勝校になる)、好投手秋山拓巳を擁する西条、今村猛を擁する清峰(翌年春の甲子園優勝校になる)といった強豪が片方のブロックに集中。
慶応義塾と国士舘が入ったブロックは実力の低い鵡川や日本文理(翌年夏の甲子園で準優勝するが当時は目立った実績は少ない)、下沖勇樹がいるが当時は2003年を最後に夏の甲子園出場と甲子園勝利から遠ざかっていた光星学院と、強豪不在の楽なブロックになった。

国士舘は格下鵡川に0-6でまさかの完敗で初戦敗退に終わったものの、関東王者の慶応義塾は楽なブロックを勝ち上がり順当に決勝進出。
準決勝の天理-西条が順延となった影響で、決勝戦は中1日の慶応義塾と連戦の天理という有利な状況を手にして見事慶応義塾が優勝。早稲田実救済につながる神宮枠を獲得した。
とはいえ優勝した関東に対し初戦敗退の東京と、圧倒的に関東のレベルが上であることが明白になった神宮大会。これでは神宮枠による増枠分も関東が獲得し、関東6枠、東京1枠にされても仕方ない。関東が獲得した神宮枠で東京が恩恵を受けては釈然としない人もいるだろう。

神宮枠により関東5位の下妻二の選抜出場が濃厚になり、6校目候補の川口青陵と早稲田実が最後の枠を争う状態に。川口青陵は関東大会初戦で終盤までノーヒットノーランの完封勝利をするなど、投手力で早稲田実より分がある。
だが選考会が近づくにつれて「甲子園で早慶戦実現を」の声が増えるばかり。こうなってはもはや結果は明らかだった。

選考結果
関東:慶応義塾、習志野、高崎商、前橋商、下妻二
東京:国士舘、早稲田実


結局六大学の永遠のライバル慶応義塾のおかげでセンバツ出場を手にした早稲田実だったが、センバツでは明治神宮大会優勝で優勝候補にもあげられた慶応義塾は初戦で開星にまさかの敗戦。
慶応が救ってギリギリ出場の早稲田実はベスト8まで進出するという秋とは逆の結果になった。慶応の選手と関係者の心境やいかに。

当落線上の日大三選考集(1994年・2010年)

早稲田実の影に隠れるが、実は日大三も当落線上での選出率が高く優遇されていたりする。
全国に多く所在する日大系列校の実績トップの学校、戦前からの名門、OBが東京都高野連に多く所属している影響があるようだ。

1993年秋季東京大会
決勝拓大一20-6東海大菅生
準決勝拓大一6-4日大三東海大菅生6-3創価

選考結果:拓大一、日大三

当時の東京の選抜出場枠は2枠。準優勝の東海大菅生は決勝で拓大一に20失点の大敗が響いて落選。準決勝で拓大一に善戦した日大三が選出された。
20失点はさすがにまずかったか。2枠ならこのくらいの選考は別に問題でもないだろう。その16年後。


2009年秋季東京大会
決勝帝京13-1東海大菅生
準決勝帝京5-4日大三東海大菅生9-8日野

2009年秋季関東大会
決勝東海大相模6-3花咲徳栄
準決勝花咲徳栄4-1東海大望洋東海大相模8-0前橋工(7回コールド)
準々決勝東海大望洋4-1桐蔭学園花咲徳栄14-2市船橋
(5回コールド)
東海大相模7-0浦和学院
(7回コールド)
前橋工8-8千葉商大付
(13回日没引分)
前橋工4-2千葉商大付

2009年秋季東京大会。21世紀枠創設により枠が減り、関東4.5枠、東京1.5枠。
16年前に続いて東海大菅生がまたしても決勝戦で大敗(その間に2度選抜に出てるが)。東京大会の決勝戦で大差がついてしまった結果、関東・東京の最後の枠は関東に行くかと思われた。
とはいえ「事実上の決勝戦」と言われた帝京と日大三は1点差の接戦になった。これが本当に決勝戦だったら、関東大会準々決勝でこれを超える好ゲームがない限り最後の枠は日大三で決まりだったのだろう。
だが現実は準決勝敗退。東京が2枠なら1994年のように2校目で選出の可能性は高かったが、1.5枠なら準優勝の東海大菅生を逆転選考で上回ってもさらに関東5校目との比較にも勝たなければならない。
東京が1.5枠の年に東京大会ベスト4止まりが選ばれた例は一度もない。あの早稲田実も準決勝敗退からの選出はない。これで日大三が選ばれたら日大三は早実並の高野連お気に入りの学校に認定されるのではないだろうか?

ちなみにこの年の秋季東京大会は東海大菅生は1回戦からの登場、日大三は2回戦からの登場で、さらに予選も東海大菅生は1回戦、日大三2回戦からの登場だった。 この秋の勝利数は東海大菅生8勝、日大三5勝と3勝も差がある。これだと仮に東京2枠だったら、いくら東海大菅生は大敗で日大三は帝京に善戦だったとしても、3勝も差があって日大三が逆転選考だったらそれはそれで反感を買ったような気がする。

関東大会に目を移すと、決勝に進出した東海大相模と花咲徳栄、準決勝で普通に負けた東海大望洋はもちろん当確。前橋工は準決勝でコールド負けしたが、相手の東海大相模の強さも考慮すれば前橋工も当確だろう。
準々決勝敗退4校では千葉商大付が前橋工に引き分け再試合にもつれるなど一番の熱戦になったが、相手の前橋工が準決勝で大敗した上に千葉の東海大望洋がベスト4進出で地域性で不利、そして1回戦シードで関東大会未勝利であることから千葉商大付は厳しくなってしまった。
市船橋もコールド負けで絶望、前評判が高く東海大相模とは2強になると言われた浦和学院もコールド負けで相当厳しい。となると関東の5校目は桐蔭学園でほぼ決まりになりそうだ。
だが桐蔭学園も決め手に欠ける。東海大相模との地域性の問題もあるし、それほど好ゲームでもない普通の3点差負け、相手の東海大望洋が準決勝敗退では関東5校目にはなれても東京2校目との比較で苦しい。

ということで関東・東京最後の枠は桐蔭学園と日大三の一騎打ちになりそうだが、日大三は例年の2校目より一段低い東京大会準決勝敗退、桐蔭学園は関東大会準決勝敗退校に3点差負け(そもそも他に候補がないせいで消去法の関東5校目)とどちらもマイナス面が目立つ。
繰り返しになるが帝京5-4日大三の試合が決勝戦だったら満場一致で日大三で文句なしだったのだろう。
そうこうしてるとき東海大菅生が不祥事で選抜推薦を辞退。これは渡りに船か。逆転選考しなくても日大三の2校目選出が確定した。あとは関東5校目との比較だが果たして。

選考結果
関東:東海大相模、花咲徳栄、東海大望洋、前橋工
東京:帝京、日大三


最後の枠は総合力で上回るとして日大三が選出。史上初の東京1.5枠の年に準決勝敗退校の選出になった。
東京六大学系列校と並ぶ高野連の優遇校の誕生か。とはいえ関東大会準々決勝で大味な試合ばかりだったことと東海大菅生の辞退と幸運な偶然が重なった印象は拭えない。
もし桐蔭学園が準々決勝1点差負けだったり、東海大望洋が決勝に進出していたら日大三は選ばれなかったかもしれない。

新当落線上の魔術師 横浜高校選考集(2012年・2014年)

東京には「早実枠」や「六大学枠」が存在することを紹介したが、関東の神奈川には「横浜枠」が存在することが2010年代に判明したようだ。
横浜は野球留学校のヤンチャ私立で本来なら高野連が嫌いそうな学校だが、横浜はなぜか高野連に好かれており当落線となる関東大会準々決勝敗退だと高確率で選出されている。どうやら横浜の渡辺監督(2015年まで)が野球日本代表への貢献度などで高野連に好かれるとのこと。
関東大会準々決勝敗退で選出される確率は単純計算でわずか5分の1。その5分の1に横浜は何度も滑り込んでいる。

2011年秋季関東大会
決勝浦和学院5-0作新学院
準決勝浦和学院11-7健大高崎作新学院6-3高崎
準々決勝浦和学院10-1甲府工
(7回コールド)
健大高崎7-0千葉英和
(7回コールド)
作新学院6-2横浜高崎4-2東海大甲府

2011年秋季東京大会
決勝関東一2-0帝京

この年の秋季関東大会は準々決勝4試合中2試合がコールド。コールド負けした2校は圏外で、東海大甲府と横浜の争いか。
点差では東海大甲府に分があるがスーパーシードで関東大会0勝なのがどう響くか(スーパーシードは1勝扱いと見なすことが2008年の宇都宮選出で決められたはずだが)。対戦相手の成績では横浜が有利だ。
東京大会準優勝の帝京もチャンスあり。だが完封負けなのがマイナスか。

選考結果:浦和学院、作新学院、健大高崎、高崎、横浜
選出理由:「投手力は互角だが、打者の対応力や試合運びで勝る」

見事横浜選出。まあこのくらいなら妥当だろう。注目すべきはこの次から。

2013年秋季関東大会
決勝白鴎大足利6-3桐生第一
準決勝白鴎大足利3-1山梨学院大付桐生第一5-0佐野日大
準々決勝白鴎大足利3-1習志野山梨学院大付4-3健大高崎桐生第一2x-1霞ヶ浦佐野日大5-3横浜

2013年秋季東京大会
決勝関東一7x-6二松学舎大付(延長10回)

2013年の秋季関東大会は、甲子園に出場した旧チームのレギュラーが多く残る横浜と(2013年夏の横浜は9人中8人が2年生のチームだった)、好投手擁する佐野日大の2校が前評判が高かった。
事実上の決勝戦と言われた準々決勝の横浜対佐野日大は佐野日大が勝利し、選抜出場を当確にした。しかし佐野日大は続く準決勝で桐生第一に0-5のまさかの完敗。これにより横浜の選抜出場が厳しくなってしまった。
関東大会ベスト4は4校中3校が北関東、残り1校は山梨という、南関東の不振が目立った大会に。
準々決勝は4試合すべて2点差以内の接戦となったため5枠目争いは非常に難しくなった。さらに東京大会決勝も延長戦の末1点差の接戦。東京大会決勝が1点差だと東京2枠になる可能性が高い。二松学舎大付も関東・東京6枠目のチャンスがあり、5校が絡む大混戦になった。

この中では山梨学院大付に逆転負けした健大高崎は、桐生第一がベスト4に進出しているため地域性で厳しく、桐生第一にサヨナラ負けしこのところあと一歩で甲子園を逃し続けてる霞ヶ浦も関東大会0勝、またベスト4を北関東が独占したため地域性で厳しいだろう。
ということで健大高崎と霞ヶ浦は一歩後退し、南関東の習志野と横浜と、東京の二松学舎大付の争いになるか。
戦績では関東5校目は優勝した白鵬大足利に負けた習志野がやや有利だろう。横浜は先述のように相手の佐野日大が準決勝で完敗したのが痛い。さらに習志野は伝統公立進学校で品位でも有利。他地区なら間違いなく習志野だろう。

選考結果
関東:白鴎大足利、桐生第一、山梨学院大付、佐野日大、横浜  補欠:健大高崎、霞ヶ浦
東京:関東一  補欠:二松学舎大付
21世紀枠:小山台、大島、海南


横浜キター。なんと横浜は伝統公立進学校の習志野より優遇される存在だったのか。まあ準々決勝敗退4校の中では総合力では横浜がずば抜けてるだろうけど。
さらに21世紀枠に東京の小山台を選出させることで3校ルールで二松学舎大付をアウトにし、横浜が選ばれやすくするという手の刷り込みよう。

選出理由:「6枠目は東京大会準優勝の二松学舎大付と関東8強の横浜との比較となり、投打の要に昨夏の甲子園経験者が残る横浜が総合力で上回るとして選出された。」

そして5枠目の最有力候補と見られた習志野はまさかの補欠からも落選。どうやら前年夏の千葉大会で敬遠した相手を恫喝したことを理由に補欠にも選出しなかったとのこと。同じ年に花巻東がラフプレーを理由に補欠からも外されたことがあったが(進学校・品位編参照)、高野連から品位で嫌われる公立進学校とは珍しいな。
この2回程度ならまだ納得できるが、横浜高校はこれを越えるとんでもない逆転選考を2019年に実現するのである。

慶応を救えなかった早実、健大高崎落選未遂事件(2017年 日大三、慶応義塾)

2015年に早稲田実に新たなニューヒーロー清宮幸太郎が入学した。1年夏でいきなり甲子園ベスト4まで進出し、斎藤佑樹以来のアイドルの出現に全国が熱狂した。
2年生の2016年は春夏ともに甲子園に出場できず。そして清宮が最上級生となった2016年の秋季東京大会で勝ち上がり、決勝に進出しセンバツ出場に王手をかけた。

そんな中同時期に開催されていた秋季関東大会でも話題騒然。早稲田のライバルでもあり盟友でもある慶応義塾が神奈川大会で優勝し関東大会に出場。ベスト8に進出し、準々決勝で前橋育英に5-6でサヨナラ負けしたが、関東5校目候補の最有力になりセンバツ出場に近づいた。
2009年春以来の早慶同時出場、それも清宮幸太郎がいるこの年に実現できれば話題性は2009年以上と六大学関係者は期待が高まった。
だがこうなると気になるのが、もし早稲田実が東京大会決勝で負けて準優勝となってしまうと、早実と慶応が最後の枠を争うという高野連にとって究極の選択を迫られなければならなくなってしまう。

東京大会決勝は点の取り合いの末、9回表に日大三が2点を勝ち越すも9回裏に追いつき、野村のサヨナラ2ランで早稲田実が優勝した。

2016年秋季関東大会
決勝作新学院5-1東海大市原望洋
準決勝作新学院5-1健大高崎東海大市原望洋5-3前橋育英
準々決勝前橋育英4x-3慶応義塾東海大市原望洋5-2山梨学院健大高崎5-2横浜作新学院9-1中央学院

2016年秋季東京大会
決勝早稲田実8x-6日大三

日  大  三100 030 002 =6
早 稲 田 実010 300 004X=8
(2016年秋季東京大会決勝)

慶 応 義 塾000 300 000 =3
前 橋 育 英000 002 011X=4
(2016年秋季関東大会準々決勝)

早実が優勝で選抜当確となりほっと胸をなでおろした矢先に新たな困った状況。決勝で早稲田実とここまでの激闘を繰り広げ、エース桜井投手や主砲金成の注目度が上がった日大三も実力と話題性から選出したい状況になってしまった。
過去東京大会決勝が1点差やサヨナラゲームとなった大会はほとんど東京から2校選ばれている。さらに上記の通り日大三も1994年と2010年は秋季東京大会ベスト4ながら選出されるなど当落線上では優遇されやすく、東京都高野連会長の母校で会長は日大三高の元校長でもある。
日大三か慶応義塾か、これはまた究極の選択になった。だがこの両方を選出する方法はまだある。それはまたもや「神宮枠」の出番である。


神宮枠大作戦 セカンドシーズン
作新学院か早稲田実が優勝すれば関東・東京の枠が1枠増える。当落線上の慶応義塾と日大三の両方を救済でき円満解決だ。
2008年は慶応が明治神宮大会優勝で神宮枠を獲得し早実を救った。今度は早実が慶応を救う番だ。
清宮を中心に6年前の恩返しと意気込んだ早稲田実は決勝に進出。念願の明治神宮大会優勝まであと1つとした。だが東の強打者清宮幸太郎の前に立ちはだかったのが、西の強打者安田尚憲を擁する履正社。
神宮大会決勝は序盤は点の取り合いとなるも、4回に履正社打線につかまり一挙7失点。5回以降は試合は動かず、打倒清宮に燃えた履正社が優勝。大阪の雄が早実、慶応、日大三、早慶同時出場を期待する東京六大学関係者や高野連の野望を打ち砕いた。

履  正  社013 700 000=11
早 稲 田 実105 000 000= 6
(2016年明治神宮大会決勝)

神宮大会決勝は関東・東京高野連にとって痛恨の敗戦。神宮枠獲得での日大三、慶応の同時救済はならず。これでとうとうどちらかを落とす究極の選択を迫られることに。
だがネット上の選抜選考マニアはこのような出場予想が増えていた。


機動破壊排除作戦
それは関東4校目に、地域性を理由にベスト4の健大高崎を抑えてベスト8の慶応義塾を逆転選考、そして最後の枠を健大高崎と日大三の比較で日大三を選出するというもの。
前年の報徳学園と済美が落選する不可解選考が記憶に新しかっただけに、今回も健大高崎を落として慶応と日大三の両方選出を実現させる波乱の選考を予想する者が増えていた。
健大高崎は2014年夏の甲子園で機動破壊と呼ばれる容赦ない盗塁でネットで批判を受け、高校野球ファンの心象は悪い。

またそれを後押しするように21世紀枠の関東推薦に栃木の石橋を推薦したことが発表。前年は21世紀枠に長田が選出されたため兵庫3校を回避するために報徳学園が落選。今年は21世紀枠に石橋が選ばれれば、作新学院・前橋育英・石橋と合わせて北関東4校は多すぎることを理由に健大高崎が落選する可能性は高い。
果たして関東・東京最後の枠は日大三か、慶応義塾か、それともその両方が選ばれて健大高崎が涙を呑むのか。運命の選考は。

選考結果 21世紀枠:不来方、中村、多治見
石橋の21世紀選出はならず。健大高崎はホッと。

選考結果
関東:作新学院、東海大市原望洋、前橋育英、健大高崎
東京:早稲田実、日大三


逆転選考は起きず健大高崎は順当に選出。最後の椅子をつかんだのは日大三だった。涙を呑んだのは慶応義塾だった。
実力では全国レベルの日大三が大きく上回るため、実力通りの順当な選考だが、慶応の政治力は早稲田や日大三には及ばなかったか。前年の近畿と四国の選考でネットが大荒れになったことに懲りたのか、今回は健大高崎を落選させる勇気はなかったようだ。

新当落線上の魔術師 横浜高校逆転選考2(2019年)

2018年秋季関東大会
決勝桐蔭学園9-6春日部共栄
準決勝桐蔭学園4-2習志野春日部共栄2-1山梨学院
準々決勝桐蔭学園8-1佐野日大習志野8-4東海大甲府春日部共栄9-2横浜
(7回コールド)
山梨学院9-1前橋育英
(7回コールド)

2018年秋季東京大会
決勝国士舘4-3東海大菅生

夏の選手権100回記念大会後の2018年の秋季関東大会。それぞれ県大会を圧倒的な強さで優勝した横浜と常総学院が前評判の2強。
しかし常総学院は初戦で桐蔭学園に9回2アウトから逆転サヨナラ満塁ホームランでまさかの大逆転負け。横浜は初戦に勝つも、準々決勝で春日部共栄にまさかのコールド負け。
波乱続出で誰も予想できなかったベスト4の顔ぶれになった。神奈川大会は組み合わせに恵まれて決勝まで全ての強豪を回避し、決勝で横浜に2-11の大敗で関東大会では場違いの前評判を受けていたが、初戦で逆転サヨナラ満塁ホームランで優勝候補の常総学院を破ると、あれよあれよと勝ち上がりまさかの優勝。
2013年とは逆に北関東の不振が目立ち、ベスト4は南関東3校と山梨1校。準々決勝は4試合中2試合がコールド、残り2試合も7点差と4点差という大差がついた試合ばかりで、どの学校も5校目に推すには決め手に欠ける難しい状態になってしまった。

一方秋季東京大会の決勝は1点差の接戦で終わった。これにより例年は揉めることが多い関東・東京の最後の枠が、今年は珍しくすんなり東京大会準優勝の東海大菅生で決まりそうである。
東海大菅生と最後の枠を争う関東5校目は佐野日大が有力。7点差がついたが、コールド負けを回避したことと、優勝した桐蔭学園と対戦したことから戦績で一歩リード。北関東のベスト4進出がないため地域性でも有利だ。
東海大甲府は準々決勝最少得点差の4点差負けで終わったが、スーパーシードで関東大会0勝である上、山梨学院がベスト4に進出しているため地域性で不利であり、厳しいと思われる。前橋育英も地域性では有利だが、準決勝敗退の山梨学院にコールド負けでは絶望的。
横浜はコールド負けした上に桐蔭学園が当確で地域性でも不利と相当厳しい。長所はドラフト候補の及川雅貴投手の存在と、神奈川大会決勝で関東大会で優勝する桐蔭学園に11-2で大勝したことだ。

ということで関東5校目は佐野日大が一歩リードで横浜と東海大甲府が追う状態。だがどこが選ばれても東京2校目の東海大菅生との比較では勝てないだろう。ほぼすべての雑誌が関東・東京の最終枠は東海大菅生を予想していた。
こんな状況でも横浜は関東・東京の最終枠を狙ってたりする。しかし万が一関東に5枠目があったとしても優勝校と対戦してコールド負けを回避し、地域性で有利な佐野日大になるだろう。
横浜の選出はありえないはずだ。いくらなんでも佐野日大と東海大菅生の両方との比較に勝てるわけない。関東大会準々決勝コールド負けで選出されたことなど過去1度もない。しかも桐蔭学園が当確である以上、地域性でも不利。
これで横浜が選ばれたら当落線上の魔術師・早稲田様もびっくりだ。早実でも東京大会コールド負けで選抜に選ばれたことなど一度もない(まあ今まで東京大会決勝で大敗したことはないが)。まさかとは思うが選考結果・・・

選考結果
関東:桐蔭学園、春日部共栄、習志野、山梨学院、横浜
東京:国士舘


横浜キター。ゴリ推し選出は伝統公立進学校と東京六大学系列校だけじゃなかったとー。
戦績、地域性どれをとっても納得できない。

選出理由:「最速152キロの速球を武器に三振を多く取れる及川を擁することと、神奈川大会決勝で桐蔭学園に11-2で大勝したことが決め手になった。」
「東京大会は関東大会と比べて低調で、東海大菅生より横浜のほうが総合力で上回ると判断した。」


優勝した桐蔭学園に神奈川大会で勝ってるというのはあるが、一番は及川見たさと横浜を出したいということみたいだ。なにより関東大会は波乱が続出し、当確校に甲子園常連の強豪校が不在となったことを補う目的もあったようだ。
こうして投手力が評価されて史上初の関東大会準々決勝コールド負けから選出された横浜だったが、センバツ初戦では及川が関東大会準々決勝に続いて大炎上。13失点を喫して完敗し、高野連の目が節穴だったことになった。

明  豊005 410 030=13
横  浜310 000 100= 5
(2019年春)

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