選抜迷選考集 近畿編

近畿は開催地甲子園がある地区ということで観客動員数が見込めることから優遇され、選抜高校野球の出場枠はかつては7枠、現在でも6枠と他の地区より多く獲得している。
中でも重要となるのが甲子園の地元となる兵庫と、その隣の西日本最大の都市大阪。ワールドカップやオリンピック同様、観客動員を確保するために「開催県枠」は存在するのだ。

選手引き抜き落選事件(1957年 明石)

1956年(1955年近畿大会)は初めて選出校が近畿大会出場校だけに絞られたが、その翌年にまさかの選考があった。ちなみに1949年に滝川が落選して以降、1956年まで近畿大会決勝進出の2校は必ず選出されていた。

1956年秋季近畿大会
決勝興国商2-0明石
準決勝興国商2-1山城明石6-0八幡商
準々決勝興国商2-1新宮山城5-3御所実明石9-1田辺八幡商3-0奈良商工
1回戦興国商5-0鳴尾山城4-3伊香明石5-1宮津奈良商工4-2寝屋川

現代ならベスト4の4校は当確で、ベスト8敗退の新宮・御所実・奈良商工・田辺の争いとなるわけだが、当時なら当確と言えるのは決勝に進出した2校だけ。それ以外は府県大会敗退校から逆転選考を食らう可能性もある。
だが決勝進出した興国商と明石の選出は間違いないはずだ。それだけは当時唯一の選考基準だ。まさかの選考結果は・・・

選考結果:興国商、山城、八幡商、新宮、寝屋川、育英

・・・えー!準優勝の明石が落ちたー!1949年の滝川以来8年ぶりの近畿大会決勝進出校の落選。
5校目にはベスト8の学校を差し置いて初戦敗退の寝屋川(しかも直接対決で勝った奈良商工は落選)。そして育英が2年ぶりに近畿大会不出場からの選出。一体何が起きたのか・・・

選考理由:「まず明石高が『選手引き抜き』に疑点を持たれたため選考対象から外すことに満場一致で決定した。」
「奈良商工と寝屋川を比較し、奈良は寝屋川に勝ってはいるが他の対戦成績が悪いのでふるい降ろされた。」


明石は選手引き抜きがあった疑惑があるため落選とのこと(あくまで疑惑ではっきりクロではないらしいのに)。詳細は不明だが当時そのようなことがあったのか。
奈良商工の落選理由にある他の対戦成績ってなんだ?夏までの大会とか、練習試合も考慮したのか?
明石が引き抜きで落選したことで、兵庫からの選出校がなくなってしまうため兵庫枠で育英を選出したと考えられるが、なぜ育英なのかは不明(兵庫大会決勝で明石を破り県1位で近畿大会に出場した鳴尾はスルーされた)。
近畿大会準優勝での落選と近畿大会不出場での選出はこの年が最後であり、翌年の1958年以降はほぼ近畿大会の成績順に選ばれるようになった(たまに初戦敗退からの逆転選考があるが)。

近畿大会ベスト4悲劇の落選(1984年 三国丘、近大付)

1983年秋季近畿大会
決勝PL学園7-1京都西
準決勝PL学園11-2近大付(7回コールド)京都西5-3和歌山工
準々決勝PL学園7-4智弁学園近大付5-3花園京都西9-2私神港和歌山工3-0高島
2回戦PL学園8-0紫野京都西10-2天理和歌山工3-1市川近大付7-0長浜
智弁学園7-2明石商花園5-4桐蔭私神港4-2三国丘高島7-5畝傍
1回戦明石商10-1八幡商三国丘10-2耐久

1983年の秋季近畿大会。当時の近畿の選抜出場枠は7枠。
普通に考えればベスト4の4校は文句なしで選出。準々決勝敗退組からは京都西に完敗したものの兵庫からのベスト4当確がないことから私神港、PL学園に善戦した智弁学園が地域性でも有力だろう。
最後の1枠は高島か花園の争いになると思われた。だが選考結果は・・・

まず優勝した清原和博・桑田真澄のKKコンビ擁するPL学園、準優勝の京都西、ベスト4の和歌山工までは順当に選出。
続いて4校目は智弁学園、5校目はやはり兵庫1位という地域性で私神港、花園と高島の争いが注目された6校目は高島が選ばれた。ところでまだベスト4の近大付が選ばれていないぞ?
そして7校目は・・・

選考結果:PL学園、京都西、和歌山工、智弁学園、私神港、高島、三国丘

2回戦敗退の三国丘であった(1回戦を勝ってるので初戦敗退ではないが)。大阪屈指の進学校、三国丘がまさかの逆転選考で、準決勝でコールド負けしたとはいえ7枠もあるのにベスト4の近大付はまさかの落選となった。
近畿大会ベスト4の学校が落選したのは、上記であげた選手引き抜き問題で準優勝の明石が落選した1957年以来で1960年以降では唯一である。
三国丘の選出理由は「大阪大会決勝でPL学園に0-1と善戦したことが評価された」とのことだが、既に両チームが近畿大会出場を決めていて、大阪大会決勝は調整試合ともいえるため参考になるかどうかはわからない。
とにかく近大付にとってはあまりにも悲劇的すぎる落選であった。

勝ったほうが落選、負けたほうが選出事件(1993年 川西明峰)

1981年の秋季近畿大会では村野工、洲本、三田学園の兵庫勢3校が初戦全滅。この年は兵庫勢の逆転選考は行われず、1982年春は第1回大会以来58年ぶり、センバツが甲子園で開催されるようになってから初の兵庫県勢のセンバツ出場ゼロとなった。

1992年秋季近畿大会
決勝東山5-3南部
準決勝東山8-1八幡商南部9-4北嵯峨
準々決勝東山11-4上宮(7回コールド)
(府1位)
八幡商9-0市尼崎(県3位)
(7回コールド)
南部6-2北陽北嵯峨4-1京都成章
1回戦東山7-4智弁学園八幡商5-4明石(県2位)南部9-0近江北嵯峨4-0泉大津
上宮9-3桐蔭市尼崎2-1県和歌山商北陽2-1五条京都成章2-1川西明峰(県1位)

1992年の秋季近畿大会は兵庫1位の川西明峰と兵庫2位の明石が初戦敗退し、兵庫3位の市尼崎はなんとか初戦を突破したが準々決勝で八幡商にコールド負け。
さらに市尼崎にコールド勝ちした八幡商は準決勝で東山に大敗し、兵庫からのセンバツ選出はかなり厳しくなってしまった。だがこういうときこその「兵庫枠」である。

準々決勝で大敗した上に県3位だが市尼崎を「兵庫枠」で選出するのか?または初戦敗退だが八幡商に善戦した県2位の古豪明石?もしくは県1位の川西明峰か?
しかしベスト4に京都が2校進出し、京都成章は京都3校目となって地域性で落選濃厚なため、その京都成章に負けた川西明峰は選びにくいところ。
だが川西明峰はこの年ヤクルトスワローズのリーグ優勝の貢献した古田敦也の母校であった。こんなことが選考に影響するのか?

選考結果:東山、南部、北嵯峨、八幡商、上宮、川西明峰、智弁学園

兵庫から選ばれたのは「メガネ枠」川西明峰だった。一方で川西明峰に勝った京都成章はやはり地域性が響いて落選。
地区大会の直接対決で負けたチームが選出、勝ったチームが落選という逆転選考はかつては珍しくなかったが、1979年東北の仙台育英落選・鶴商学園選出以来(東北編参照)で、平成ではこれが唯一である。
ちなみに智弁学園も初戦敗退ながら選出。準々決勝敗退からの選出は1校、初戦敗退からの選出は2校という波乱の選考になった。

関関アベック出場事件(1998年 関西学院・関大一)

西の早稲田と言われるのが関西学院。戦前の全国大会常連の古豪で、1928年には優勝も経験している。その後表舞台から遠ざかっていたが、1997年の秋季近畿大会に兵庫3位ながら出場し、久々の甲子園出場が近づいた。
そして関関同立系列校の一角、関大一。関大一と関西学院が揃って1997年の秋季近畿大会に出場。センバツに関関アベック出場の期待がかかった。

1997年秋季近畿大会
決勝郡山4-3報徳学園
準決勝郡山7-0京都成章報徳学園7-6京都西
準々決勝郡山5-3PL学園京都成章8-7関西学院報徳学園5-3近江京都西1-0関大一

しかし両校とも惜しくも準々決勝敗退。近畿の選抜出場枠は例年7枠なので、ベスト4の4校は当確、準々決勝敗退の4校から3枠を争う。優勝した郡山に惜敗し総合力の高いPL学園、滋賀からベスト4がないため地域性で近江は有力か。最後の1枠を関大一と関西学院で争う展開になりそう。
・・・ということは、このままでは関西学院と関大一のどちらかは出場できない。関関アベック出場は実現できなさそうだ。まさか総合力の高いPL学園を落とすのか。地域性を無視して近江が落ちるのか。

だが1998年の選抜は70回の記念大会で例年より4校多い36校が出場する。増枠される4枠はどの地区に割り振られるから決まってない。ということは、察しのいい方ならわかるだろう。

選考結果:郡山、報徳学園、京都西、PL学園、京都成章、関大一、関西学院、近江(近畿8枠)

まさかの近畿8枠。センバツが「近畿中心の招待試合」時代だった1963年以来、35年ぶりの8枠だった。結果ベスト8進出校がすべて選出。さらに最後に選ばれたのは近江で、近江が増枠のおかげで救われたような扱いに。実際は増枠で救われたのは関大一か関西学院のはずであるわけだが。
現在では近畿は基本6枠だから、21世紀枠に選ばれてさらに神宮枠を獲得しないと8校出場はできない。当時21世紀枠があったら関西学院は21世紀枠に回っていたのだろうか?21世紀枠は2013年の土佐以外は公立しか選ばれないのが一般的だけど。
1993年ごろまではすべての地区の出場枠数が選考会当日に決まっていた(ある程度予測はついていたが)。1998年は増枠分のみ選考会当日に決定。現在では公平性を考えてか秋季大会開幕前に発表されており、秋季大会が終了してあとの選考会当日に増枠を決定するような後出しジャンケンはできない。

センター返し枠事件(2003年 近大付)

大阪はこれまで1927年春の1度しかセンバツ出場を逃したことはない。近畿でナンバー1の地区であるため近畿大会初戦で全滅することもほとんどないのだ。

2002年秋季近畿大会
決勝平安6-3智弁和歌山
準決勝平安4-3斑鳩智弁和歌山9-0東洋大姫路
準々決勝平安7-5近江(県1位)斑鳩5-4南部(県1位)智弁和歌山7-4箕島(県3位)東洋大姫路2-1育英(県2位)
1回戦平安3-1東海大仰星(府2位)斑鳩6-3神戸国際大付智弁和歌山3-0北嵯峨東洋大姫路4-2近大付(府1位)
近江9-0大産大付(府3位)南部6-5京都成章箕島8-4水口東育英6-1天理

2002年の秋季近畿大会で、史上初めて大阪勢が初戦全滅となってしまった。
さらに不運なことに21世紀枠の創設によって近畿地区の選抜出場枠は1つ減って6枠。さらに準々決勝はすべて3点差以内の接戦だった。
ベスト4の4校+準々決勝敗退の4校のうち2校、普通に考えてこのパターン以外考えられないだろう。ベスト4の4校は確実。5校目は優勝した平安に善戦し、地域性でも有利な近江が有力。

最後の6校目を南部と育英と箕島が争うがかなり難しい。1点差の惜敗で県1位、相手も準決勝で1点差の惜敗の南部がやや有利という前評判だった。
育英も同じく1点差の県1位だが、相手の東洋大姫路が準決勝でコールド負けしたのがマイナス。箕島は県3位で3点差負けのため一番不利だが、高野連としては春夏連覇達成校で星稜との延長18回の名勝負で有名な古豪箕島を出したいのではないか?という下馬評もあった。
初戦敗退校は補欠にも入り込める余地はなさそうだ。ついに76年ぶりに大阪の選抜出場が途切れるのか。

選考結果:平安、智弁和歌山、斑鳩、東洋大姫路、近江、近大付
選出理由:「センター返しができる粘り強い打線」


見事大阪枠を確保。そして伝説の選出理由。これが今でも語り継がれ、アンサイクロペディアにも書かれた「センター返し枠」である。
ただ近大付は1984年は近畿大会ベスト4ながら理不尽な落選。その帳尻合わせとも言われた。

とはいえセンター返しがうまいだけで勝てるほど甲子園は甘くない。近大付は選抜初戦で遊学館に8-16で大敗。打線はまあまあだったが投手力の弱さを露呈した。
なお箕島は補欠にも入れず、復活は6年後の2009年までお預けになった。
近大付 010 003 022= 8
遊学館 335 400 01X=16
(2003年春)


兵庫枠にまつわる名選考(2006年 神港学園)

2005年秋季近畿大会
決勝履正社9-8智弁和歌山
準決勝履正社11-2PL学園(7回コールド)智弁和歌山7-1京都外大西
準々決勝履正社10-4神港学園PL学園7x-6平安(延長11回)智弁和歌山5-1天理京都外大西5-4北大津
1回戦履正社9-0高田商PL学園7-3綾羽智弁和歌山9-1市尼崎京都外大西9-0近江
神港学園7-0県和歌山商平安12-2智弁学園天理4-0市川北大津3x-2大阪桐蔭
(延長13回)

準々決勝
平  安 202 000 020 00 =6
PL学園 300 000 003 01X=7

京都外大西 000 300 011=5
北  大  津 200 002 000=4

2005年の秋季近畿大会は難しい選考となり、また1992年同様兵庫勢の不振が目立った大会。
準々決勝は2試合が1点差の接戦、2試合がコールドにはならなかったが点差が開いた試合になった。このまますんなり5・6枠目を1点差負けの平安・北大津にできれば問題ないが、地域性と兵庫枠の存在、そして準決勝が2試合とも準々決勝を1点差で勝ったチーム(PL学園・京都外大西)が大差で勝ったチーム(履正社・智弁和歌山)に大敗したことが選考をややこしくさせた。
兵庫勢は3校中2校が初戦敗退。唯一初戦を突破した兵庫1位の神港学園も準々決勝で履正社にコールド寸前の完敗と厳しい状態に。履正社は大阪3位で当時は無名に近い学校で、そのような学校に準々決勝最大の6点差の完敗はマイナスと言わざる得ない。本来なら選抜は絶望的だろう。
だが準決勝で履正社が大阪大会では敗れていたPL学園にコールド勝ちする番狂わせを起こし、そのまま履正社が優勝したのは神港学園にとって追い風になった。

ということで決勝に進出した2校はもちろん確実。準決勝敗退の2校も大敗したが多分問題なし。5枠目・6枠目を準々決勝敗退の4校で争う。点差だけなら平安と北大津が有利だが、甲子園の地元である兵庫からの出場をゼロにできないため、神港学園は外せないか。
上記のように神港学園は履正社が優勝したおかげで兵庫枠以外にも「優勝校と対戦」というアドバンテージができた。
平安は京都大会を圧倒的な強さで優勝し、近畿大会初戦でも難敵智弁学園に12-2で6回コールド勝ちするなど総合力は高い。選抜に出場すれば優勝候補にも上がりそうな実力を誇る。
しかし前田健太擁する優勝候補のPL学園と準々決勝で対戦する不運。8回までPL学園に6-3とリードするが、9回2アウトから3点差を追いつかれ、延長11回サヨナラ負け。久々に逆転のPLの底力を見せつけられてしまった。このままPL学園が優勝していれば平安は有利になっていたが、準決勝で履正社にまさかのコールド負け。さらに同じ京都の京都外大西がベスト4に進出してるため地域性でも不利になってしまった。
北大津は滋賀3位での出場で前評判は低かったが、近畿大会初戦で直前の2005年夏の甲子園でベスト4に進出した中田翔を擁する大阪桐蔭に延長13回の末サヨナラ勝ちする大金星をあげた。続く準々決勝でも夏の甲子園準優勝の京都外大西に終盤までリードする善戦。4-5で惜しくも敗れたものの初の選抜出場が狙える位置につけた。
大阪桐蔭を破る大金星で沸かせたことと、ベスト4進出校に公立校がないため公立枠確保という点で有利だ。不利なのは県3位であること(準々決勝止まりの他の3校はすべて府県1位)。
天理は智弁和歌山に4点差負け。県1位、地域性ともマイナス要素はないものの、これと言った決め手はなく4校の中では一番不利か。

ということで天理は一歩後退し、平安、北大津、神港学園の3校で2つの椅子を争う展開が予想される。あるいは神港学園は兵庫枠で優勢、平安と北大津の一騎打ちとなるか。

選考結果:履正社、智弁和歌山、京都外大西、PL学園、北大津、神港学園

やはり兵庫枠は守られた。そして公立枠も。5校目は先に北大津が選ばれ、最後に神港学園と平安で比較されて地域性で神港学園が上回ったとのこと。平安は高い実力を誇りながら地域性とPL学園の準決勝でコールド負けが響いて無念の落選となった。

古豪商業高校の逆転選考事件(2007年 県和歌山商)

2006年秋季近畿大会
決勝報徳学園5-1大阪桐蔭
準決勝報徳学園7-0北大津大阪桐蔭9-5市川
準々決勝報徳学園5-0北陽北大津7-6東洋大姫路大阪桐蔭13-6近江
(8回コールド)
市川10-3智弁和歌山
(7回コールド)
1回戦報徳学園2-1熊野北大津4-2郡山大阪桐蔭6-0天理市川8-1福知山成美
北陽5-3県和歌山商東洋大姫路7-6京都成章近江9-0京都学園智弁和歌山11-8東海大仰星

2006年の秋季近畿大会。近畿の出場枠は6枠なので例年ならベスト4進出の4校がまず選出され、準々決勝敗退の4校が残り2枠を争うわけだが、この年は準々決勝がワケありの試合だらけに。
4試合中2試合がコールドゲーム、もう1試合も5-0という実力の差が出た試合に。その中で唯一1点差の接戦に持ち込み、戦績なら5枠目の最有力候補になったであろう東洋大姫路だが、不運にもベスト4に報徳学園と市川の兵庫2校が進出しているため、2003年から創設された1県3校禁止ルールによりこの時点で圏外になってしまった(1995年は兵庫から3校出場してるが、現在のルールではこれは不可能)。
となるとベスト8止まりの残り3校の争いとなったが、北陽が5点差の完封負けだが3校で唯一コールド負けを回避し、相手は優勝した報徳学園なので5枠目候補としてまず抜け出したか。

最後の6校目をコールド負けした近江と智弁和歌山で争うことになるのか。スコアでは甲子園未出場の市川に完敗の智弁和歌山より、コールド負けしたが甲子園で優勝候補に挙げられる大阪桐蔭と中盤まで点の取り合いに持ち込んだ近江が優勢だが、地域性では智弁和歌山が有利だ。
滋賀の北大津がベスト4に進出して当確となっており、兵庫と大阪が2校出場なため滋賀も2校ではかなりバランスが悪くなってしまう。そうなると他に和歌山の選出がないため智弁和歌山が最後の枠に滑り込むのか?

いや、実は和歌山から選ばれるのが智弁和歌山とは限らなかった。
智弁和歌山は県2位。和歌山大会決勝で智弁和歌山を破り県1位で近畿大会に出場したのが古豪商業高校の県和歌山商。OBに和歌山高野連や近畿高野連の所属が何人もいるアドバンテージもある。
とはいえ初戦敗退で、さらに相手の北陽は続く準々決勝で負けている。準々決勝敗退校に負けて初戦敗退の学校の選出は1993年の川西明峰の例があるが(他に準々決勝敗退の高島にベスト16で負けて選ばれた1984年の三国丘もこれに近い。地下1回戦に勝っているが)、例年なら圏外である。
さらに他にも初戦敗退ながら優勝した報徳学園に善戦した和歌山の熊野も6枠目の候補になると予想した者もいた。近畿大会の成績だけなら智弁和歌山や県和歌山商より上と言えるが、県3位の学校が初戦敗退で選ばれた例は一度もない。
もし熊野が選ばれたら県和歌山商より批判を受けそうだな。毎日新聞の展望にも県和歌山商はあっての熊野の名前はなかった。

そして県和歌山商は21世紀枠の候補にも推薦されている。近畿推薦に選ばれ、中国・四国・九州の地区推薦校と西日本の最終1枠を争うところに来た。こうなれば県和歌山商を21世紀枠で出場させる方が平和に解決できそうだ(下記の2016年のように21世紀枠を悪用して一般枠を操作したのは卑怯すぎるが)。
しかしこの年の西日本の21世紀枠候補はレベルが高かった。西日本の大本命と言われていたのが秋季宮崎大会で優勝し、九州大会でも一般枠圏内目前のベスト8まで進出した宮崎の伝統公立進学校、都城泉ヶ丘だった。2007年1月に宮崎県知事に就任した「そのまんま東」こと東国原英夫の母校であることがさらに強力な追い風になっていた。
さらに同じく一般枠ライン目前の中国大会ベスト4に進出し、関西にサヨナラ負けと善戦した山口の華陵も実力が高く有力候補。
この2校が相手では名門智弁和歌山を破り和歌山大会で優勝した県和歌山商とて苦しい。現在は21世紀枠は3枠あるが当時は2枠で東西1校ずつ。現在のように3枠なら3校目に滑り込みも狙えたが・・・

選考結果 21世紀枠:都留、都城泉ヶ丘
近畿:報徳学園、大阪桐蔭、市川、北大津、北陽、県和歌山商  補欠:近江、東洋大姫路


初戦敗退の古豪公立校の選出キター。近畿最後の枠に滑り込んだのは県和歌山商。21世紀枠争いはそのまんま泉ヶ丘に敗れたが、近畿選考でベスト8の3校を見事逆転選考。
まあ県大会で智弁和歌山に直接対決で勝っているから逆転選考ではないとも言えるが(「逆転選考」と報じたメディアもいた)。補欠1位は近江、補欠2位は東洋大姫路になり、智弁和歌山は補欠にも選ばれなかった。
選考経過を見ると予想通りベスト4と北陽までの5校はすんなり選出され、最後の枠は残りのベスト8敗退3校と初戦敗退ながら善戦した県和歌山商、熊野、郡山の計6校の比較になったようだ(一応熊野も候補に入っていたのか)。

選考過程:「同一県から3校は選ばない原則から東洋大姫路は除外。続いて熊野、郡山が戦力が劣るとして除外。さらに2試合で18失点の智弁和歌山が投手力の不安で除外。 最後に近江と県和歌山商が争い、実力は甲乙つけがたかったが地域性で県和歌山商が選ばれた。」

近江、智弁和歌山、県和歌山商の比較では先に智弁和歌山が落ちて、最後の2校は互角だから地域性か。
21世紀枠が創設されて近畿の出場枠が6枠に減った21世紀以降で、近畿大会初戦敗退の学校が一般枠で選出されたのは2003年の近大付と2007年の県和歌山商の2回のみ。
今回は準々決勝ダブルコールドと1県3校ルール、地域性の影響による消去法の選出ということで県和歌山商は得をした形になった。

21世紀枠大作戦(2012年 洲本)

2011年秋季近畿大会
1回戦
(兵庫勢のみ)
報徳学園(県1位)2-9履正社
関西学院(県2位)0-7大阪桐蔭(7回コールド)
育英(県3位)5-7近江

2011年の秋季近畿大会、30年ぶりに兵庫県勢3校が初戦全滅。しかも関西学院はコールド負け、報徳学園はコールド寸前の完敗。2010年夏に1年生で甲子園ベスト4に進出した田村伊知郎投手を擁し、優勝候補にもあげられていた報徳学園の大敗は衝撃的なものだった。
唯一善戦した育英は県3位であり、過去の選考では初戦敗退からの逆転選考は県1位が絶対条件。県1位の報徳学園もこの点差では絶望的。これでは一般枠での兵庫の選出はかなり厳しい。いよいよ「万策尽きたー」と言ったところか。
だが救済方法はもう1つある。「一般枠がないなら21世紀枠で選べばいいじゃない」

21世紀枠なら県大会ベスト8以上、大都市県ならベスト16以上であれば成績関係なく選出することができる。この年21世紀枠候補の兵庫推薦を受けたのは淡路島の洲本。惜しくも秋季近畿大会出場を逃したが兵庫大会は4位だった。
だが21世紀枠もある程度戦績を考慮しており、当時は最低でも地区大会に出場した学校がほとんどだった。
さらに数年前まで21世紀枠に選出される条件はブランク30年以上という規則があった。洲本の最後の出場は昭和61年、1986年。ブランクは25年しかなかった。

選考結果 21世紀枠:石巻工、洲本、女満別
選出理由:「1995年の阪神淡路大震災の前後に生まれ、島の復興とともに育った世代。東日本大震災の被災地へのアピールにもなる。」


地区大会不出場や30年ルールをモノともせず洲本は21世紀枠に選ばれ、見事兵庫枠を確保した。
そしてちょうど東日本大震災の被災地から選ばれた石巻工とセットでかっこつけた選出理由である。だが阪神淡路大震災が発生したのは当時の高校生が生まれたころ。選手は復興には関係ないのではないだろうか。
その後21世紀枠はこの年から2016年まで5年連続で3校のうち1校は秋季地区大会に出場できなかった学校が選出されている。
見事21世紀枠で兵庫は選出ゼロのピンチを乗り切ったが、次のピンチはわずか3年で訪れてしまうのだった。

兵庫枠が途切れた年(2015年)

2014年秋季近畿大会
決勝天理8-4立命館宇治
準決勝天理6-1龍谷大平安立命館宇治4-1奈良大付
準々決勝天理3-2大阪桐蔭龍谷大平安6-4北大津立命館宇治6-2近江奈良大付3x-2箕島(延長11回)
1回戦天理10-3報徳学園龍谷大平安7-0大商大堺立命館宇治11-7神戸国際大付奈良大付2-0鳥羽
大阪桐蔭10-0日高中津北大津8-6和歌山東近江3-2PL学園箕島6-5津名

前回からわずか3年の2014年の秋季近畿大会、兵庫勢がまたしても初戦全滅。さらに大阪も大阪桐蔭の1勝しかできず、ベスト8に阪神地区が1校のみ、ベスト4に京都と奈良が2校ずつという波乱の近畿大会になった。
これまで天理・智弁学園の県2強に阻まれあと一歩で甲子園出場を逃してきた奈良大付がベスト4に進出し、悲願の甲子園出場を有力にした。
普通に考えればベスト4の4校は確実。阪神地区で唯一の1勝した大阪桐蔭も鉄板で、最後の1枠を箕島、近江、北大津で争うと思われるところ。この中で唯一県2位で、対戦相手も準決勝で敗れている北大津はやや不利か。
箕島は1点差のサヨナラ負け、公立の古豪校、近江は初戦でPL学園に勝利、滋賀県勢が2校初戦突破という長所がある。

だが簡単に兵庫を選出なしにするわけにはいかないのはご存知の通り。
また近畿には公立高校を最低1校選出する「公立枠」というのも存在しており、選抜第1回大会から近畿から公立高校が出場しなかったことは1度もない。2010年には一般枠で公立の選出がなかったため、21世紀枠に向陽が選ばれている。今回確実と見られるベスト4の4校と大阪桐蔭はすべて私立である。
ここで一部の選抜選考オタの間で噂されていた選考パターン

神戸国際大付ねじ込み作戦
ベスト4の4校と大阪桐蔭の選出までは順当として、残り1校をベスト8の箕島でも近江でも北大津でもなく、初戦敗退したが兵庫1位の神戸国際大付を兵庫枠でゴリ推すと予想する選抜選考オタが多数いた。
上記のように2003年の近大付のセンター返し枠があっただけに、6枠目争いにはベスト8の残り3校の他にも神戸国際大付も土俵にいると思われた。
この説を唱える選抜選考オタの出場校予想にはもっと過激なものもあった。

奈良大付排除作戦
まず優勝した天理、準優勝の立命館宇治は文句なしで選出。3校目はいきなりベスト8の大阪桐蔭、続いて4校目はベスト4の龍谷大平安。
5校目は準々決勝で奈良大付にサヨナラ負けしたものの実力は奈良大付より上ということで、古豪箕島。そして6校目に神戸国際大付を兵庫枠で選出。
奈良大付はベスト4ながら地域性でまたしても涙を呑み、直接対決で奈良大付に負けた箕島が逆転選考されるというサプライズを予想した者もいたのだ。

21世紀枠大作戦 セカンドシーズン
3年前と同様に21世紀枠での救済。これなら兵庫枠と公立枠の両方を同時に確保でき一石二鳥にもなる。
この年兵庫県推薦に選ばれれば選出有力と思われたのは兵庫3位で近畿大会に出場した淡路島の津名。過去の夏の兵庫大会準優勝の経験があるが甲子園未出場の津名は有力な候補であった。だが2010年に賭けトランプの不祥事で21世紀枠の県推薦を辞退した過去があった。
秋季大会終了後、21世紀枠の推薦校が発表され、兵庫が推薦したのは県大会ベスト8の姫路南となった。津名はやはり賭けトランプが影響したようだった。姫路南は偏差値59の準進学校程度で過疎地でもなく、アピールポイントは少ない。その後姫路南は近畿推薦で落選し、21世紀枠での兵庫の出場はなくなった。

「21世紀枠はダメ、一般枠も厳しい、どうすればいいんだー」

選考結果:天理、立命館宇治、龍谷大平安、大阪桐蔭、奈良大付、近江

「万策尽きたあああぁぁ」

白箱

33年ぶりの屈辱。ついに兵庫勢が選抜出場が途切れた。逆転選考は起きなかった。
なお大阪も大阪桐蔭のみの選出。33年前の1982年は大阪から2校出場していたため、大阪と兵庫合わせて阪神地区1校は史上最少となってしまった。

和歌山枠確保事件(2016年 市和歌山・長田)

このように今まで近畿では大阪と兵庫が優遇選考されてきたのだが、最近になって近畿の選考委員会の半数を和歌山出身者が占めるようになり、それによって「和歌山枠」も誕生したのである。
和歌山の学校が21世紀枠に選ばれたのは島根と並び全国最多タイの3回で、2010年代だけで2013~2014年の2年連続を含む3回の選出がある。

2015年秋季近畿大会
決勝大阪桐蔭3-2滋賀学園
準決勝大阪桐蔭5-3明石商滋賀学園8-1龍谷大平安
準々決勝大阪桐蔭9-4智弁学園明石商7-0市和歌山
(7回コールド)
滋賀学園1-0報徳学園
(延長14回)
龍谷大平安7-0阪南大高
(7回コールド)

2015年の秋季大会近畿大会はベスト4が4府県から1校ずつと綺麗に分かれた。ベスト4の4校はもちろん確実。
準々決勝はコールドゲームが2試合、非コールドゲームが2試合。報徳学園は明石商がベスト4に進出しているため兵庫2校目になるものの、延長14回の末の惜敗で5校目の最有力候補。
智弁学園はコールド寸前の完敗となったが相手が優勝した大阪桐蔭であることと、ベスト4に奈良県勢が進出してないため地域性を考慮して有力。コールド負けした市和歌山と阪南大高は報徳学園と智弁学園を上回る要素がなく厳しい。

・・・なんと珍しく近畿の6枠はすんなり決まりそうな年だった。ネットでも各新聞でもベスト4の4校と報徳学園、智弁学園で満場一致だった。
地域性も兵庫2校、大阪・滋賀・京都・奈良から1校ずつと稀に見るバランスの良さ。6府県から1校ずつになれば完璧ではあったが。

だが和歌山だけが選抜出場なしというのを、選考委員会の半数を占める和歌山は良しとしなかった。和歌山枠を確保するプロセスとして、近畿高野連は21世紀枠の近畿地区推薦にとんでもない学校を推薦した。
兵庫の伝統進学校、長田。一般枠で明石商、報徳学園の出場が有力視されているにも関わらず、21世紀枠の地区推薦に兵庫の学校を選出したのである。ルールにより2003年から同一都道府県から一般枠で3校選出することは禁止になったが、一般枠で2校、21世紀枠で1校の3校選出することは禁止されていない。だが一般枠と21世紀枠をあわせて同一都道府県から3校選ばれたことは1度もない。
選抜選考委員会では先に21世紀枠の3校を選出し、そのあと一般枠の出場校を決定する。つまり21世紀枠で長田を選出し、それによって長田、明石商と兵庫3校目になることを理由に報徳学園は落選とし、地域性で市和歌山を選出するという作戦を近畿高野連は企んでいるのではないかと2ちゃんねるで噂され始めた。

とはいえ21世紀枠によって一般枠で出場有力だったはずの学校を落選させたら非難が殺到するのは言うまでもない。
それに21世紀枠に長田が選ばれなければ破綻する作戦。長田は兵庫大会ベスト8。この年は香川大会で優勝した離島の星・小豆島、沖縄大会で優勝した同じく離島の八重山、震災被災地の岩手の釜石など21世紀枠候補のレベルが高く、県大会ベスト8止まりの長田がそう簡単に選ばれるわけないと思われた。
和歌山枠はあるのか、ないのか。

選考結果 21世紀枠:釜石、小豆島、長田
県大会準々決勝敗退をモノともせず長田は21世紀枠に選出され、第1関門通過。運命の近畿選考。順当に報徳学園が選ばれ2001年の茨城以来の1県3校選出となるのか、地域性で市和歌山が逆転選考か。

選考結果 近畿:大阪桐蔭、滋賀学園、龍谷大平安、明石商、智弁学園、市和歌山

「和歌山枠はありまぁす」

STAP

2ちゃんねらーの悪い予感は的中した。延長14回0-1惜敗の報徳学園が落選、0-7コールド負けの市和歌山が当選。21世紀枠のおかげで一般枠で権利のあった学校が落選するという理不尽選考で、和歌山の陰謀は成功した。

滋 賀 学 園 000 000 000 000 01=1
報 徳 学 園 000 000 000 000 00=0 →落選

市 和 歌 山 000 000 0 =0 →選出
明  石  商 000 001 6X=7
(2015年秋季近畿大会準々決勝)

選出理由 長田
「1995年の阪神淡路大震災で学校がある神戸市長田区は甚大な被害を受けた。学校は1600人の避難民を受け入れ、復興にも貢献した。」
「同じ敷地内に夜間定時制と通信制の高校が併設され、グラウンドは他の部と共用で、練習が制限される中で秋季兵庫大会ベスト8まで進んだことが評価された。」


4年前の洲本と同じく阪神淡路大震災を引き合いに出したが、選手は生まれる前なことは誰もツッコミなし。

選出理由 市和歌山
「市和歌山は7回にエースに代打を送り、それが裏目に出て2番手投手が大量失点した結果のコールド負けだったが、勝負に出てのコールド負けはマイナスではない。」
「報徳学園は打力に難があり、近畿大会1回戦までは打率・防御率ともに市和歌山が上回っている。報徳学園と市和歌山の総合力は互角で、最後は地域性で市和歌山が選ばれた」


「勝負に出たのはマイナスではない」という、筆者に言わせればかつての2000年の戸畑選出(その1参照)のとき以上の見苦しい言い訳だった。エースに代打を送った結果2番手投手が大量失点というのは、勝負に出たのではなくただの采配ミスではないか?
せめて2003年の近大付の「センター返し」とか前年の米子北の「希望と夢を与える」くらいの笑える選考理由を考えなかったのだろうか?まあそういう問題ではないが。
打率・防御率ともに市和歌山のほうが上といっても対戦相手のレベルの違うのではないか。両校の秋季大会の戦績は以下のとおり。市和歌山は県大会から組み合わせに恵まれ、片や報徳学園は県大会初戦から準決勝まですべて東洋大姫路や育英といった甲子園出場経験のある強豪校と対戦し、近畿大会初戦も滋賀1位の北大津と厳しい組み合わせだったことはなぜ考慮しないのか。

報徳学園市和歌山
兵庫大会2回戦5-4東洋大姫路和歌山大会1回戦11-1田辺工
兵庫大会3回戦12-2姫路工和歌山大会準決勝3-2和歌山東
兵庫大会準々決勝3-2育英和歌山大会決勝14-2高野山
兵庫大会準決勝5-3神港学園
兵庫大会決勝0-2明石商
近畿大会1回戦3-2北大津近畿大会1回戦13-1平城
近畿大会準々決勝0-1滋賀学園近畿大会準々決勝0-7明石商

強豪ばかりを倒して近畿大会準優勝校に延長戦までもつれこんだ報徳学園と、楽な相手にだけ勝ってベスト4止まりの学校にコールド負けの市和歌山を互角というのは無理がある。2016年の選抜選考会は史上初めてネットでバーチャル中継され、進学校・品位編で取り上げたように近畿の他に中国・四国でも不可解選考があったため物議を醸した。
これは2ちゃんねる(現5ちゃんねる)高校野球板の書き込みである。

和歌山

こうして高野連が「本来の実力は全国レベル」と太鼓判を押して選出した市和歌山だったが、センバツ初戦では0-0の9回表にエラーを連発し大量6失点で完敗という、秋季近畿大会準々決勝とほぼ同じような展開で敗退し、さらに相手の南陽工業は続く2回戦で秀岳館に0-16で大敗。まさに市和歌山の選手たちの傷口を広げ、いろんな人の思いを踏みにじった選考だった。

南  陽  工 000 000 006=6
市 和 歌 山 000 000 000=0

南  陽  工 000 000 000= 0
秀  岳  館 812 040 01X=16
(2016年春)


破られた2校ルール(2018年 近江・彦根東)

2017年秋季近畿大会
決勝大阪桐蔭1-0智弁和歌山
準決勝大阪桐蔭5-0近江智弁和歌山5-4乙訓
準々決勝大阪桐蔭10-1近大付
(7回コールド)
近江4-3彦根東智弁和歌山11-4法隆寺国際
(7回コールド)
乙訓9-4智弁学園
1回戦大阪桐蔭12-0京都翔英彦根東4-3明石商智弁和歌山12-8履正社乙訓8-1神港学園
近大付4-1高田商近江10-0日高中津法隆寺国際9-0比叡山智弁学園6-4西脇工

3年ぶりにまたも兵庫が初戦全滅。2010年代は3年周期で初戦全滅になってしまった。
6年前は21世紀枠で兵庫ゼロをしのぐも、3年前は泣く泣く兵庫ゼロ。90回記念大会となる2018年のセンバツで地元兵庫ゼロは避けたいところだが、今回も21世紀枠を獲得しないと兵庫からの選出は無理だろう(あるいはネットが大荒れになるくらいの逆転選考をするのか)。
大阪から当確なのも大阪桐蔭だけなので3年前同様阪神で1校のみになりそう。だが準優勝の智弁和歌山と対戦した履正社を初戦敗退ながら逆転選考し、兵庫がゼロの変わりに大阪を2校にして阪神2校と予想する者もいた。

今回の見どころは滋賀から初の2校出場なるかというもの。近畿で唯一甲子園優勝と選抜2校出場がなく、選抜に出れない年も多い滋賀にとって悲願のアベック出場が有力になっている。それも2001年に県勢初の甲子園準優勝を果たした滋賀の盟主近江と、県内有数の進学校彦根東のアベック出場となれば滋賀県民にとって最高の大会になる。

そして注目された21世紀枠の地区推薦。近畿推薦を受けたのはなんと2校出場が有力の滋賀の膳所である。滋賀ナンバー1の伝統進学校の膳所は最終選考でもかなり強そうだろう。
しかし膳所が21世紀枠に選ばれれば、1県3校を回避するために一般枠選出が有力な滋賀2校のうち1校を落とさなければいけない(それによって兵庫が食い込める余地も出てくるか)。
だがそれだと同じく公立進学校の彦根東を落選させることになってしまう。それは好ましくないはず。まさか彦根東に直接対決で勝ってベスト4に進出した近江を落とすのは無理があるし。
この際膳所の21世紀枠選出はあきらめるのか。滋賀県民としてもせっかくの初の2校出場に泥を塗りたくない。そして兵庫枠の行方は・・・

選考結果 21世紀枠:由利工、伊万里、膳所

あらら、膳所が選ばれてしまった。県内トップの伝統公立進学校の政治力は絶大だったか。

選出理由:「文武両道を実践していることに加え、データ管理を担当する女子部員を置いていることが、女子生徒がマネージャーだけでない形で野球に関われることを示していると評価された」

女子スポーツの人気上昇に乗っかったかっこつけた選出理由。 1県3校出場は21世紀枠込みでも実質禁止だったよな。そうしないと2016年と割に合わないし。彦根東の力も膳所には及ばないし。
彦根東大ピンチ。それとも近江を蹴落として掟破りの彦根東と膳所のダブル伝統公立進学校の揃い踏みか?どっちにしろ2年前より荒れそうだぞ。

選考結果 近畿:大阪桐蔭、智弁和歌山、乙訓、近江、彦根東、智弁学園  補欠:履正社、明石商

っておい!近江・彦根東とも順当に選出かよ。滋賀県勢初の2校出場どころか3校出場。2001年の茨城以来17年ぶり、一般枠での1県3校選出が禁止になって以降初の3校出場である。
一般枠2校、21世紀枠1校の3校選出はルール上認められているとはいえ、21世紀に長田が選ばれたせいで落選した2年前の報徳学園、大阪桐蔭と履正社の2強に遠慮して21世紀枠選出をあきらめた前年の北野の立場は(選考小ネタ集参照)・・・
予想通りネット上での報徳学園ファンは納得いかない声が多かった。
兵庫はゼロ、一部で噂されていた履正社の逆転選考も実現せず(逆転で履正社が補欠1位、明石商が補欠2位にはなったが)。選抜90回記念大会の阪神2県の出場は3年前同様大阪桐蔭1校のみになった。

福知山成美まさかの選出(2019年)

2018年秋季近畿大会
決勝龍谷大平安2x-1明石商(延長12回)
準決勝龍谷大平安7-0履正社(7回コールド)明石商12-0智弁和歌山(5回コールド)
準々決勝龍谷大平安5x-4市和歌山(県2位)履正社5-0福知山成美(府1位)明石商4-0報徳学園(県3位)智弁和歌山5-2大阪桐蔭(府2位)
1回戦龍谷大平安4-3天理履正社11-2南部明石商6-4京都国際智弁和歌山12-5大阪偕星学園
市和歌山8-4近江兄弟社福知山成美5-4神戸国際大付報徳学園5-2近江大阪桐蔭10-0橿原

大阪桐蔭が史上初の2度目の春夏連覇を達成した夏の甲子園100回記念大会後の2018年の秋季近畿大会。京都大会準決勝で京都国際にまさかの敗戦で京都3位での近畿大会出場となった龍谷大平安が、近畿大会では本来の強さを発揮し優勝した。
天理は奈良大会を圧倒的な強さで優勝し前評判は高かったが、近畿大会初戦で不運にも龍谷大平安と当たってしまい初戦敗退。他にも夏の甲子園ベスト8のメンバーが多く残る滋賀1位の近江が、3位校爆弾の報徳学園を引いてしまい初戦敗退。
史上初の3季連続優勝と選抜3連覇を狙う大阪桐蔭は準々決勝で2-5で智弁和歌山に敗れ(公式戦で初めて智弁和歌山が大阪桐蔭に勝った)、当落線上で終えてしまった。智弁和歌山が準決勝で0-12の5回コールド負けしたのが非常に痛い。しかも大阪大会で大阪桐蔭に勝った履正社まで準決勝コールド負け。大阪桐蔭に勝った学校がどちらもコールド負けで終了は選考で相当マイナスになりそうだ。
準々決勝ではコールドゲームは発生しなかったが、準決勝は2試合ともコールドとなったことで選考をややこしくさせた。

決勝に進出した2校はもちろん当確。準決勝で敗退した2校はコールド負けしたことがどう響くか。履正社は3枠目で当確と言えるが、0-12で5回コールド負けの智弁和歌山は保留か。
5・6枠目争いは準々決勝で敗退した4校に、初戦で龍谷大平安に惜敗した天理も絡む大混戦になった。その中で智弁和歌山は準決勝で大敗したが、やはりベスト4の実績で4校目での選出が有力だ。5校目・6校目に順番が入れ替わる可能性はあるが。
福知山成美は厳しいと思われる。準々決勝最大の5点差完封負けで、相手が準決勝でコールド負けは相当マイナス。準々決勝敗退校唯一の府県1位であるが、近畿大会優勝の龍谷大平安に勝っての府1位なら可能性があったが、龍谷大平安との対戦はないため(平安に勝った京都国際に決勝で勝っただけ)プラス要素が少なく、選ばれる理由が見当たらない。
天理も優勝した龍谷大平安に惜敗、奈良からの当確校がいないことから地域性で有利だが、やはり初戦敗退が響いて選出は厳しいと予想される。

ということで、市和歌山、大阪桐蔭、報徳学園の3校で2つの椅子を争う展開が予想される。優勝した龍谷大平安に1点差サヨナラ負け市和歌山が5校目に一歩リードか。県2位でありながら弱小近江兄弟社に勝っただけで選出はちょっとずるい気がするが。3年前にも和歌山枠確保の理不尽選考で選出されてるし。
最後の枠争いは大阪桐蔭と報徳学園の一騎打ちとなるか。戦績と話題性では春夏春3連覇と選抜3連覇がかかる大阪桐蔭、対戦相手の成績では報徳学園に分がある。
だが福知山成美が府1位というアドバンテージを生かして最後の枠を狙っていた。しかし選抜選考はどの地区も地区大会の戦績が最優先で、県大会の通過順位は二の次。地区大会の成績が甲乙つけがたいときだけ参考にされる傾向がある。
負けた試合のスコアも負けた相手の成績もダメな福知山成美の選出はないはず。伝統公立進学校か関関同立のような名門私立ならこの位置でも府県1位を理由に選出はありえるだろうが、なんの話題性もない私立の福知山成美が優遇されるわけがない。ましてや福知山成美は高野連が嫌いそうなヤンチャ私立。不祥事も多く2010年には夏の大会出場を食らった前科もある。
上でも言ったように龍谷大平安に勝って府1位になったわけでもない。府県1位を重視するなら天理でもいいはずだし。

選考結果:龍谷大平安、明石商、履正社、智弁和歌山、福知山成美、市和歌山

なんと福知山成美が選出。しかも優勝校に1点差負けの市和歌山より前の5校目で選出とは。

選出理由:「エース小橋の制球力の良さと、上位打線に巧打者が揃う打力を評価。龍谷大平安が優勝し、京都国際が初戦で明石商に善戦したことから、京都勢のレベルの高さを評価し、京都1位の福知山成美を選出した。」

どうやら優勝した府県の1位が重視されたようだ。京都大会で龍谷大平安に勝ったわけではないから、強引に京都国際も持ち上げて強かったことにしてる。
確かに過去の選考でもコールド負けを回避した府県1位校は選出される可能性が高いわけだが、大阪桐蔭や報徳学園の位置に伝統公立進学校や関関同立系列校がいたら、府県1位であっても平凡な私立が選出されるのだろうか?どうせ別の年はダブスタだろう。
ヤンチャ私立のくせにこんな戦績で選ばれるとは福知山成美は運が良かったな。ライバルに伝統進学校がいたら間違いなく選ばれてないだろう。
大阪桐蔭は補欠1位に終わり史上初の3季連続優勝の夢は絶たれたのであった。

選考委員会赤っ恥事件(2022年 近江)

2021年秋季近畿大会
決勝大阪桐蔭10-1和歌山東
準決勝大阪桐蔭9-1天理(7回コールド)和歌山東8-1金光大阪(7回コールド)
準々決勝大阪桐蔭5-0東洋大姫路和歌山東3-2京都国際天理5-1市和歌山金光大阪7-6近江

東海で今世紀最大の逆転選考が行われた同じ年、近畿でもやや疑惑の選考が行われた。
2014年秋、2017年秋に近畿大会初戦で全滅し、屈辱の選出ゼロを喫した兵庫勢がまたしても選考漏れピンチ。今回は1位校、2位校が初戦敗退し、3位校の東洋大姫路だけはなんとか初戦を突破したが、準々決勝優勝候補筆頭の大阪桐蔭と当たり、0-5の完敗。3位校が準々決勝でこの完敗は本来なら絶望的である。
しかし大阪桐蔭が準決勝、決勝を準々決勝以上の圧勝で優勝し、6枠目での選出の望みが出ると、さらに明治神宮大会で初優勝し近畿が神宮枠を獲得。近畿は7枠となり、東洋大姫路に次々と追い風が吹いた。
府1位で準優勝した和歌山東に1点差負け、夏の甲子園ベスト4の好投手森下が残っている京都国際は5枠目の最有力。6枠目は1点差負けだが相手の金光大阪が準決勝でコールド負けした近江、0-5で完敗したが相手が近畿大会を優勝した東洋大姫路の争いとなりそうだったが、大阪桐蔭の神宮枠獲得で1枠増え、両方選ばれる可能性が出てきた。どちらも同県勢がベスト4に進出しておらず、地域性では有利。
和歌山東が準優勝したため、地域性、試合内容とも不利な市和歌山は厳しいか。普通に予想すると市和歌山以外のベスト8の7校で決まりか。
しかし気になるのは近年兵庫より政治力の高い「和歌山枠」。6年前に和歌山枠が猛威を振るったときに選ばれたのも市和歌山だ。今回は和歌山東が当確とさせてる以上、無理に和歌山から選ぶ必要もないのだが。

選考結果:大阪桐蔭、和歌山東、天理、金光大阪、京都国際、市和歌山、東洋大姫路

和歌山枠は1枠とは限らない。またしても市和歌山キターーーー。しかも近江と市和歌山の争いかと思われたら、東洋大姫路より前の6番目に選出。
選出理由は好投手米田天翼を評価したとのこと。近江には前年夏の甲子園ベスト4に導いた山田陽翔がいるのに評価されなかったのか。山田は秋季近畿大会は怪我で欠場したのが影響したようだが、春のセンバツには間に合いそうだ。
まあ市和歌山は1位校で近江は3位校だし、このくらいの選考仕方ないとも思えるが、選抜開幕直前にまさかの事態が・・・。

京都国際、新型コロナウイルス感染で選抜を辞退。補欠1位の近江が代替出場。

2年前の春夏の甲子園を中止に追いやり、昨年夏の甲子園でも大会中に宮崎商と東北学院の2校を辞退に追いやったコロナがまたしても高校野球を襲った。大会前だったため補欠校の近江が代替出場となった。そしてこの近江の繰り上げ出場が、近畿選考を担当した選考委員会を赤っ恥にする結果を出す。

運良くセンバツの切符を掴んだ近江は秋季大会を欠場したエース山田が戻ってきた。初戦の相手は長崎日大。実力では近江が上回るものの、急遽決まった甲子園で調整不足の影響か、8回まで0−2とリードされる。だが9回土壇場で同点に追いつくと、タイブレークとなった延長13回表に決勝の4点を勝ち越し、見事逆転勝利を収めた。出場辞退の代替出場校が勝利したのは1992年春の育英以来30年ぶりであった。
すると近江は本来の実力を取り戻し、2回戦で聖光学院を破り2勝目。準々決勝では秋季近畿大会準々決勝で逆転負けし、一度はセンバツを阻まれた因縁の金光大阪にリベンジし、代替出場校初のベスト4進出。準決勝は浦和学院に延長11回サヨナラ勝ちし、滋賀県勢21年ぶり、春は初の決勝進出。決勝で大阪桐蔭に敗れたが、補欠校とは思えない快進撃を見せた(詳細)。と言っても近江は前年夏の甲子園ベスト4の強豪。準優勝もある意味当然の結果だったとも言える。

2022年春 近江
1回戦6-2長崎日大(延長13回)
2回戦7-2聖光学院
準々決勝6-1金光大阪
準決勝5x-2浦和学院(延長11回)
決勝1-18大阪桐蔭

選考委員会が一度は落選させた学校が甲子園で準優勝してしたということは、選考委員会の見る目のなさが明るみになってしまった。とはいえ補欠校でも準優勝するくらい近畿地区はレベルが高いということでもあり、この大会市和歌山もベスト8に進出している。さらにこの大会近畿勢は7校中6校が初戦を突破した。唯一初戦で敗退したのは東洋大姫路だった。つまり兵庫枠で選出した(?)東洋大姫路の選出こそが間違いということか。
翌2023年からNHKの「センバツ球春譜」で「補欠からの快進撃」としてこの年の近江が紹介されるようになった。これは同時に選考委員会の赤っ恥が末代まで晒されることでもある。

戻る
inserted by FC2 system